大人になった拓実がたくさんの子供とたわむれていた。とても穏やかな顔をしていて、無邪気に笑ったりしていた。子供はみんな元気いっぱいで、俺や拓実に抱きついたり周りで楽しそうに思い思いに話していたりする。

拓実は抱きついてくる子供をうまく気にかけながら、周りで話している子供の声にも頷いたり笑ったりしている。俺は子供を相手にしながらも、拓実ばかりを見ている。

 白くやわらかな光に包まれたその景色が、ふっと見慣れた部屋に書き換えられた。穏やかな心地は覚めてからも続いていた。あの子供たちは誰だったのだろう。

とてもたくさんいた。まるで幼稚園児とその先生のような雰囲気だった。その拓実のかわいいこと美しいこと。天使や女神と形容したくなるほどだった。

 布団を出て、縁廊下の菊の花を見る。拓実の魅力をぎゅっと閉じ込めたような艶姿。愛らしく、美しく、どこか影がある。うっとりするほど華やかで、甘いものを感じさせる。

花を受け取った日、これが拓実のようだといったのは憶えている。当時ずっと幼かった拓実に、この花に似た魅力を強く感じた。彼女は当時から、綺麗でかわいかった。凛とした雰囲気が俺に大人びて見せたのかもしれない。

 菊へ鼻を寄せ、深く息を吸い込む。独特な香り。一日分の活力が得られるような心地がする。手のひらいっぱいの大きな花は、俺が手を離すとふっと興味なさそうに戻っていく。

そこでゆらゆらと揺れているのがなんとなく気まぐれなような、いたずらっぽいような感じがして好きだ。猫がふっと離れていきながら、少し行ったところで振り返ってくるような。