「拓実ちゃんは?」と彼はいった。「拓実ちゃんは僕のそばにいてくれるよ。拓実ちゃんは、ここにいないの?」

 「……いるよ。私はここにいる」

 この子を守らなくてはならない。この小さく繊細で儚い、か弱い心を守ってあげなくちゃいけない。

 「敬人君には拓実がいる。だから、大丈夫」

 怖いものなら私が取り除いてあげる。知らないものはまず私が知ってくる。敬人君は私が守る。敬人君は私が傷つけさせない。

 嘘しかない世の中で、その気持ちだけが本物だった。

 「怖いものなんて、なにもない。大丈夫だよ」

 ああ、なんて愛おしい。腕の中にすっぽりとおさまる敬人は、まるで弟のようだった。体に寄りかかってくるのがたまらなくかわいかった。

 「あったかいね」という愛らしい声に、「そうでしょう?」と答える。

 綺麗な瞳を覆ったまま片腕でぎゅっと抱きしめると、かわいい声が笑った。敬人の手が抱きしめた腕に触れる。かわいくて、どうにか大切にしたくて、胸の中がおかしくなりそうだった。

 「……また、ひなたぼっこしたい」

 「うん、いつでもしようよ」