拓実の助言を受けながら加減するうち、それっぽい動きができるようになった。

 満足した頃にはかなり疲れていた。体の変なところに力が入っていたような感じだった。ごろんと寝転んだ拓実の横に同じ体勢で着くと、お腹が鳴った。「お腹空いたね」と拓実がのんびりと笑う。

 彼女は身軽に上体を起こすと、「おもち食べる?」と俺を見た。「おもち?」と聞き返すと、「おやつにしよう」といって、拓実はさっと立ちあがり、部屋を出ていった。

 薄暗くしんとした部屋は心地よかった。遠くで鳥が鳴いているのが聞こえるけれど、それほど大きくは聞こえない。目を閉じれば眠れてしまえそうだった。

 拓実がお盆に載せて持ってきたのは、桃色のかまぼこのようなものだった。小さく切り分けられていて、半月型の飴玉のようでもあった。

 「すあまだよ」と拓実はいった。

 「すあま?」

 「甘いおもちだよ。ママが作ったの。おいしいよ」

 机にお盆を置くと、拓実は透明な液体の入ったグラスをこちらへ置き、すあま、なるものをぱくりと口に入れた。

 俺もその一つを指につまんで、「いただきます」といってからかじってみた。確かにおもちのような食感だった。いや、拓実のいう通り、甘いおもちだった。

 「どう?」と期待と不安の混じったような目で見られ、「おいしい」と答えると「よかったあ」と拓実は表情をやわらげた。

 飲んでみたグラスの中身はレモン水だった。ほんわかした甘味を持ったまったりしたやわらかなおもちの後味がすっきりとした。

むしろ当時の俺には少し酸っぱいくらいで、手に残ったすあまをさらにかじった。「酸っぱかった?」と笑う拓実に「ううん」と首を振った。