放課後、舞島が教室に顔を出した。「敬人、今日は?」とのんびりした声がいう。「今日もちょっとパス」と答えると、「ええ、寂しいなあ」という。

「紙原君たちだけじゃ不満かよ」という紙原へ、舞島は「俺が友達と二日も離れ離れになったことがあるか」とむきになったふうで返すが「知らねえよ」と跳ね返っていく。

「一緒に飯食ったろうよ」という紙原に、舞島は聞こえていないようになにも答えない。「なにこいつ、怖いんだけど」と紙原が苦笑する。

 「サイン本だぞ」と松前の興奮した声がする。「手に入れないわけにいかないっしょ、そこの書店だっつうのに」と。「まあいいけど、俺、ポテト食いたいんだよね」と稲臣が答える。

 こちらまでくると、稲臣は「よう、舞島」と手を挙げる。「敬人今日もパスだって」と舞島が答える。「まじか」と沈んだ声に見られ、「ごめんね」と答える。

「拓実に会いに行こうと思って」というと、「えっ、大丈夫?」と舞島が声を発した。「ちゃんとしようと思って」と答えると「そう」と小さく返ってきた。

 「それよりお前ら、書店付き合えって」と松前がいう。「鎌田様のサイン本だぞ」

 「誰だよ鎌田」と紙原が呆れたようにいう。「鎌田源五郎先生だろうが」という松前に、「なんか強そう」と紙原。

「時代小説書いてる人だよね」と俺がいうと、「知ってる?」と松前がきらきらした目で見てくる。「何作か読んだことあるよ」と答えると、「お前センスいいな」といわれる。

 「なんかちょっと前に映画化されてたよね」と舞島も乗っかる。

 「そうなんだよ、その鎌田源五郎様のサイン本をそこの書店が入荷したっていうの。いや、さすがの俺もそれ買いに行かないような馬鹿じゃねえし」

 ほらもう行くぞ、と張り切る松前に続く形で教室を出る。