昼休み、紙原と稲臣と一緒に食堂へ向かうとき、「やあ、同志」と松前がくっついてきた。「ええ、なに急に」という稲臣に、「いいじゃん、仲間に入れてよ」と松前は懐っこく返す。俺はそれを聞きながら、シャープペンシルとその芯のケースをポケットに入れた。

 階段をおりながら、「お前らって普段なにしてんの?」と松前がいった。「大したことはなにも」と紙原が答える。「食堂で昼飯食って放課後たまに遊ぶくらい」と稲臣。

 「友達みたいだな」と驚いたようにいう松前へ「友達だよ」と紙原と稲臣が声を揃える。

 「お前友達いたことないのかよ」という稲臣に、松前は自分で「あんまそういうこといってやんなよ」と返す。

 食堂は今日も混雑していた。

 「松前、俺日替わり定食ね」と紙原。「俺ら席取っとくから」となんでもないようにいう彼へ松前は「お前最低だな」と苦笑する。

「友達ってそういうもんなんだよ」という紙原に「んなわけねえだろ、人間辞めちまえ」とさらに苦笑する。

 ふと、体の右側にちょっとした衝撃があった。「あっ、ごめんなさい」と深々と頭をさげて去っていったのは俺よりいくらか身長の低い男子だった。名前も学級も知らない人だった。

 「あれが女子だったら恋の始まりなのになあ」と稲臣。「いや、食パン咥えてないし曲がり角でもないからだめっしょ」と松前。「朝でもないしね」と俺も乗っかってみると、「お前らいつの話してんだよ」と紙原が入ってきた。

「遅刻しそうな雰囲気もなかったしな」という稲臣へ「まだやんのかよ」と紙原。「転校生がくるとかいう話もないし」という松前に紙原が「うるせえよ」と返し、「なんか俺に当たり強くねえ?」と松前が苦笑する。