内田は問いただした。しかし、長い沈黙を置いた後、金島がようやく切り出した言葉は『すまない』だった。

『今は何も言えない……ただ、私は一番お前たちに信頼を置いている。私が関わってしまった事件に、必ずお前たちを巻き込んでしまうだろう。そのときは、全面協力を頼む』

 信頼できるチームで取り組むことになる、といって金島は電話を切った。

 通信の途切れた携帯電話を訝しそうに眺める内田を前に、毅梨が暑さを感じたように襟元を緩めた。

「おい、内田、一体何が起こっている?」
「さぁ、俺にもよくは分かりません。それが東京で起こっていて、公にされていない事件と関わっている可能性が高いってことくらいですかね」
「そもそも管轄が違うだろう」

 煙草をくわえた捜査員が、そう言って顔を顰めるが、内田は見向きもしなかった。パソコンを無造作に机の上に起き、ポッキーを五本丸ごと歯で噛み砕いた。その据わった瞳には、スイッチが入ったかのように闘志が浮かび上がっている。

「実を言うと、金島さんから頼まれた件で俺が情報を探し出すたびに、その痕跡をキレイに消してる奴がいるんですよ。普通の機器じゃあ到底間に合わないくらいの、すげぇスピードで。だから、ハッキングもバレていない状況なんだと思います」
「つまり、お前にとっては味方になるのか?」

 毅梨が、分からんなと顔を顰めて言う。

「情報を探るお前を追っているとなると、味方じゃない可能性しか思い浮かばねぇんだが。――お前、そんなんで大丈夫なのか?」