「ナイス、委員長!」
にやり顔で、暁也がボールを胸でキャッチした。「今年は委員長じゃないよ!」と言い返す男子生徒の脇から、黄色いゼッケンを来た三組の生徒が飛び出す。彼らと同じ速さで駆け抜けてきたのは、修一を含んだ四組の生徒たちだ。
足にボールが着くと同時に、暁也が動き出した。「奴を止めろ!」と西田が叫んで三人の生徒と共に彼を取り囲むが、前に走り出ていた修一にパスが回ると、ボールはそんな四人の生徒たちの包囲網をあっさりと抜けた。
ちらりと目をやった修一のゼッケンがふわりと揺れ、西田の前髪が浮き上がる。
修一がにぃっと八重歯を覗かせて、対する西田が口の端を引き攣らせ見つめ合ったのは、ほんの僅かな時間だった。弾くように走り出した二人を見て、場はわっと盛り上がり、騒ぐ生徒たちにも目を止めずに試合は進む。
「待て、修一ぃ!」
「待ってたまるかっての」
歌うように答えた後、修一の足が素早く動いた。一瞬消えたボールを見失った生徒たちに、三組のゴールキーパーである長身の男子生徒、柔道部の円藤(えんどう)が叫ぶ。
「馬鹿ッ、早く暁也をマークしろ!」
西田が真っ先に空いたスペースへと目を向けたが、そのとき、既にボールを足で止めていた暁也の目は、真っ直ぐゴールコートに向いていた。
声変わりをしていない生徒が「奴はシュート率百パーだぞ」と叫び、西田が駆け寄りながら「くそっ、サッカー部だったらキャプテン並みだぜ!」と愚痴りながら走る。その後ろから坊主頭の生徒が続きながら、少々間が抜けた顔でぼやいた。
「つか、四組って大半帰宅部なのにチームプレーがすげぇんだよなぁ、なんでだろ?」
「俺が知るか!」
西田が野球部の佐野(さの)に怒鳴り返したとき、暁也が思いきりボールを蹴り飛ばした。
真っ直ぐに飛んだボールが西田と佐野、後ろから駆け寄っていた黄色いゼッケンの生徒たちを通り過ぎる。慌てて振り返った西田は、そのボールがゴールコートをそれることに気付いて安堵したが、ただ一人、四組のゴールコート辺りでそれを傍観していた雪弥は「あ」と声を上げた。
「もーらいっ!」
楽しげな声が上がった瞬間、悪戯っ子の笑みを浮かべた修一が飛び出していた。
あっと叫ぶ三組の面々に構わず、迷うことなくボールを蹴る。円藤が素早く反応して動いたが、威力のあるボールは彼の大きな手をすり抜けて、ゴールコートを突き上げた。
途端に四組が歓声の声で湧いた。三組である黄色いゼッケンの少年たちが「あぁぁぁ」と落胆と絶望の声を上げ、西田が「チクショー、先に一点取られたッ」と歯噛みして呻いた。
四組のゴールキーパー、三学年一の身長と体重を持った相撲取り候補・森重が「本田君……」と囁く声にも気付かず、雪弥は修一と暁也のコンビプレーに悠長な口笛を一つした。
クラス全体を見渡して「仲がいいんだなぁ」とのんびり呟く雪弥の後ろで、「まぁね……」と答える森重は神妙な面持ちである。
にやり顔で、暁也がボールを胸でキャッチした。「今年は委員長じゃないよ!」と言い返す男子生徒の脇から、黄色いゼッケンを来た三組の生徒が飛び出す。彼らと同じ速さで駆け抜けてきたのは、修一を含んだ四組の生徒たちだ。
足にボールが着くと同時に、暁也が動き出した。「奴を止めろ!」と西田が叫んで三人の生徒と共に彼を取り囲むが、前に走り出ていた修一にパスが回ると、ボールはそんな四人の生徒たちの包囲網をあっさりと抜けた。
ちらりと目をやった修一のゼッケンがふわりと揺れ、西田の前髪が浮き上がる。
修一がにぃっと八重歯を覗かせて、対する西田が口の端を引き攣らせ見つめ合ったのは、ほんの僅かな時間だった。弾くように走り出した二人を見て、場はわっと盛り上がり、騒ぐ生徒たちにも目を止めずに試合は進む。
「待て、修一ぃ!」
「待ってたまるかっての」
歌うように答えた後、修一の足が素早く動いた。一瞬消えたボールを見失った生徒たちに、三組のゴールキーパーである長身の男子生徒、柔道部の円藤(えんどう)が叫ぶ。
「馬鹿ッ、早く暁也をマークしろ!」
西田が真っ先に空いたスペースへと目を向けたが、そのとき、既にボールを足で止めていた暁也の目は、真っ直ぐゴールコートに向いていた。
声変わりをしていない生徒が「奴はシュート率百パーだぞ」と叫び、西田が駆け寄りながら「くそっ、サッカー部だったらキャプテン並みだぜ!」と愚痴りながら走る。その後ろから坊主頭の生徒が続きながら、少々間が抜けた顔でぼやいた。
「つか、四組って大半帰宅部なのにチームプレーがすげぇんだよなぁ、なんでだろ?」
「俺が知るか!」
西田が野球部の佐野(さの)に怒鳴り返したとき、暁也が思いきりボールを蹴り飛ばした。
真っ直ぐに飛んだボールが西田と佐野、後ろから駆け寄っていた黄色いゼッケンの生徒たちを通り過ぎる。慌てて振り返った西田は、そのボールがゴールコートをそれることに気付いて安堵したが、ただ一人、四組のゴールコート辺りでそれを傍観していた雪弥は「あ」と声を上げた。
「もーらいっ!」
楽しげな声が上がった瞬間、悪戯っ子の笑みを浮かべた修一が飛び出していた。
あっと叫ぶ三組の面々に構わず、迷うことなくボールを蹴る。円藤が素早く反応して動いたが、威力のあるボールは彼の大きな手をすり抜けて、ゴールコートを突き上げた。
途端に四組が歓声の声で湧いた。三組である黄色いゼッケンの少年たちが「あぁぁぁ」と落胆と絶望の声を上げ、西田が「チクショー、先に一点取られたッ」と歯噛みして呻いた。
四組のゴールキーパー、三学年一の身長と体重を持った相撲取り候補・森重が「本田君……」と囁く声にも気付かず、雪弥は修一と暁也のコンビプレーに悠長な口笛を一つした。
クラス全体を見渡して「仲がいいんだなぁ」とのんびり呟く雪弥の後ろで、「まぁね……」と答える森重は神妙な面持ちである。