「規則とはすなわち私が定めるものだ。うむ、会って良し」
「あんたね……」
「そんなに気になるのなら、お前の目で確かめてくる方が早いだろう」


 いちいち聞かされる私もひどく疲れるんだ、さっさと行って来い、命令だ、と続けてナンバー1は唇の端を引き上げた。雪弥は「汚ねぇ、また職権乱用かよ」と文句の一つを浴びせて車を降りた。


 集った人間の視線が雪弥へと向く中、尾崎が真っ先に挨拶をした。

「今回は、本当にお世話になりました。ありがとうございます」
「いえ、別にそんな大層なことをしたわけでは……」

 戸惑う雪弥に、尾崎の隣から出てきた矢部が言葉を続けた。

「担任として以外では、初めてお顔を会わせます。元ナンバー二十一の矢部です」

 矢部は、握手を求めて雪弥に大きく薄い手を差し出した。慣れないようにぎこちなく笑い、雪弥はその手をそっと握り返した。握り潰してしまわないかという不安があり、すぐに手を離す。

 そこへ、二人の少年組が矢部を押しのけるようにして割り込んできた。

 こちらを興味津々に覗きこんでくる顔には、不思議と一つの陰りも怯えも感じられなくて、雪弥は困惑した。どうやら精神的に参った様子はないみたいだ、と心身共に柔軟性のある若者に感心してしまう。

「本当に大人なんだなぁ、つか、マジで目が青い! ハーフなのか?」
「ちッ、どうりで年上臭かったわけだぜ。達観してるガキかと思ったら、本当に大人かよ」

 少年たちは相変わらず遠慮なく、まるで同級生の「本田雪弥」の時と変わらず、それぞれ好き勝手なことを口にした。

 雪弥は、修一には「純粋な日本人だよ」と答えたが、顔をそむける暁也には返す言葉が見つからなかった。苦笑した彼の父である金島が「すみません」と言ったので、彼も困ったように笑い返して「とんでもない、事実ですよ」と詫びた。

 金島は初めて会う雪弥に自己紹介をしたあと、今事件で共に動いた部下たちを紹介した。

 雪弥は、金島は当然のことながら、夜狐が優秀だと述べていたその部下たちにも個人的に興味があった。度胸と根性が座り、強い行動力を秘めた面々は飛び出た才能を持っていたからだ。

 警視庁が召喚したがっているほど凄腕のハッカー内田、元軍事関係に携わっていた毅梨、射撃で決して的を外さない澤部、阿利宮と三人の部下は体術に長け大会や勤務実績共に優秀な成績を収めている。

 阿利宮を含む四人チームは、挨拶もぎこちなかった。怖がられていることを雪弥は思ったが、澤部は特に表情も変えずに「どうも、澤部です」と平気で煙草をくゆらせた。厳粛な面持ちで一礼した毅梨とは対照的に、内田はだらしなく立ったままぼりぼりと頭をかいて「内田っす」と面倒そうに述べる。

 中々面白いチームだな、と雪弥がまたしても興味引かれたとき、突然修一が興奮収まらぬように黒いスーツを掴んだ。

「なぁなぁ雪弥ッ、俺、頑張って刑事になるぜ!」
「はい……?」
「はじめはテレビの中の憧れみたいな感じだったけど、やっぱり俺は刑事が好きだ! かっこいいし尊敬するし、うん、やっぱりかっこいい!」