金島たちは、すっかり言葉を失ってしまった。澤部が煙草を地面へと取り落とし、内田はあんぐりと口を開けたまま硬直する。
一体どうなっているんだ、この学校……――と三人は表情に浮かべて沈黙した。
とうとう眩暈と頭痛まで感じ、金島は思わず頭に手をやった。
封鎖された学園には自分の息子とその友人がおり、そこにはたった一人で殺戮任務を実行するナンバー4というエージェントがいる。尾崎は元々ナンバー組織に所属しており、暁也の担任は元エージェントで尾崎の部下であったという。
澤部が、ようやく自分が煙草を落とした事に気付き、新しい煙草を取り出しながら「ほんと、とんでもねぇな」とやや諦め気味に言った。
尾崎が、おおらかな性格を見せつけるように穏やかに笑んだ。それを見ていた内田の顔に、「奴は狸じじぃに違いない」と言うようなげんなりとした表情が浮かぶ。
「まぁ、もう少しで終わると思いますよ。我々は、気楽に待っていましょう」
尾崎はそう告げ、人懐っこい微笑みを浮かべた。彼は長時間立っていられない片足に負担を掛けないよう、それとなくステッキに体重を預けて、夜の学園を仰いだ。
※※※
両校舎内に生存者の標的が残っていないことを確認した雪弥は、三階廊下からヘロインがある中庭の倉庫へと向かいかけたところで、不意に足を止めた。
音に気付いて窓を覗きこむと、中庭の大学校舎近くで喚き散らす小さな人影があった。窓ガラスに血の手型を一つ残し、雪弥は一目散に中庭へと向かった。
これまで殺した中には、リストに載っていた李、藤村、富川、尾賀、といった四人の中心人物は入っていなかった。取引の現場に集っているのだろう、と雪弥は推測していたから、校舎外側は最後に取っておいたのだ。
生徒たちの教室がある東階段を飛ぶようにして下ると、校舎一階で一気に加速し、中庭へ抜けられる裏口へ向けて高等部校舎中を南方向へと突き進んだ。
辿りついた裏口の鉄の扉を、蹴り飛ばして吹き飛ばした。
すると開いた裏口の向こうに、肉体強化を施された四人の大男たちがいるのが目に留まった。同じくこちらの存在に気付いた彼らが、すかさず銃を構えて荒々しく突進してくる。
雪弥は校舎の外へと躍り出ながら、一瞬にして全員の喉を手で切り裂いた。筋肉と皮だけが残った切断面から血が噴き出したが、男たちと入れ違うように先へと進んでいた雪弥は、返り血を浴びることもなかった。異様に伸びて武器のように太さを増したた彼の鋭利な爪先だけが、真っ赤な血に染まっている。
「一体どういう手品なんだ、小僧?」
声が上がった先に目を向けると、そこには肩で荒々しく呼吸をしている白衣の老人がいた。正面からその顔を見た雪弥は、リストで確認していた李であることに気付いた。先程喚き散らしていたのも彼である。
一体どうなっているんだ、この学校……――と三人は表情に浮かべて沈黙した。
とうとう眩暈と頭痛まで感じ、金島は思わず頭に手をやった。
封鎖された学園には自分の息子とその友人がおり、そこにはたった一人で殺戮任務を実行するナンバー4というエージェントがいる。尾崎は元々ナンバー組織に所属しており、暁也の担任は元エージェントで尾崎の部下であったという。
澤部が、ようやく自分が煙草を落とした事に気付き、新しい煙草を取り出しながら「ほんと、とんでもねぇな」とやや諦め気味に言った。
尾崎が、おおらかな性格を見せつけるように穏やかに笑んだ。それを見ていた内田の顔に、「奴は狸じじぃに違いない」と言うようなげんなりとした表情が浮かぶ。
「まぁ、もう少しで終わると思いますよ。我々は、気楽に待っていましょう」
尾崎はそう告げ、人懐っこい微笑みを浮かべた。彼は長時間立っていられない片足に負担を掛けないよう、それとなくステッキに体重を預けて、夜の学園を仰いだ。
※※※
両校舎内に生存者の標的が残っていないことを確認した雪弥は、三階廊下からヘロインがある中庭の倉庫へと向かいかけたところで、不意に足を止めた。
音に気付いて窓を覗きこむと、中庭の大学校舎近くで喚き散らす小さな人影があった。窓ガラスに血の手型を一つ残し、雪弥は一目散に中庭へと向かった。
これまで殺した中には、リストに載っていた李、藤村、富川、尾賀、といった四人の中心人物は入っていなかった。取引の現場に集っているのだろう、と雪弥は推測していたから、校舎外側は最後に取っておいたのだ。
生徒たちの教室がある東階段を飛ぶようにして下ると、校舎一階で一気に加速し、中庭へ抜けられる裏口へ向けて高等部校舎中を南方向へと突き進んだ。
辿りついた裏口の鉄の扉を、蹴り飛ばして吹き飛ばした。
すると開いた裏口の向こうに、肉体強化を施された四人の大男たちがいるのが目に留まった。同じくこちらの存在に気付いた彼らが、すかさず銃を構えて荒々しく突進してくる。
雪弥は校舎の外へと躍り出ながら、一瞬にして全員の喉を手で切り裂いた。筋肉と皮だけが残った切断面から血が噴き出したが、男たちと入れ違うように先へと進んでいた雪弥は、返り血を浴びることもなかった。異様に伸びて武器のように太さを増したた彼の鋭利な爪先だけが、真っ赤な血に染まっている。
「一体どういう手品なんだ、小僧?」
声が上がった先に目を向けると、そこには肩で荒々しく呼吸をしている白衣の老人がいた。正面からその顔を見た雪弥は、リストで確認していた李であることに気付いた。先程喚き散らしていたのも彼である。