「暁也、これってトラックか……?」
「だろうな。三階に当たるくらいなら、トラックがハイライトにしないと当たらねぇだろうし……」
三台目の光りが差しこんだ後、最後にやけに重々しい大型トラックの振動音と強い光を走り、それきりぴたりとやってこなくなった。
「トラックが全部で四台…………」
そう呟いて考え込む暁也のそばで、修一がふと「刑事ドラマみたいだな」といって冗談を続けた。
「常盤も持ってたし、暁也の親父さんが動くぐらいだから、トラックに詰め込めるくらい大量の違法薬物とかが関わっている事件だったりして」
え、と暁也は不意を突かれたような顔を向けた。
思い付きで言っただけの修一は、自分に向けられる視線から暁也が言わんとしていることを察し、笑顔を困惑へと移していった。「まさか、そんなの冗談だって」とうろたえてしまったとき――
二人の視界に入っていた扉の窓ガラスから、常盤の顔がにゅっと現れた。
修一が「ぎゃあ」と全身で叫び、暁也がぎょっとして後ずさった。扉の外にいた常盤が大きな声で笑ったかと思うと、鍵が開く音が上がり、続いて扉がスライドする。
「あはははは、驚き過ぎだろ。幽霊とでも思った?」
制服を着たままの常盤は、陽気そうな台詞を並べて室内に入ってきた。ボタンが閉められていないブレザーと、細い腰回りを覆う白いシャツの裾。いつもはきっちりしめられている紺色のネクタイも緩かった。
露骨に警戒する暁也と修一に気付くと、常盤は後ろ手で扉を半分だけ閉めて、わざとらしく肩をすくめた。
「やだなぁ、そんなに睨まないでくれよ」
「やばい事に足突っ込むなんて、利口じゃない奴のやることだぜ」
困惑する修一の前に立ち、暁也は常盤を睨みつけた。常盤は気にもならないように二人を通り過ぎ、放送機材の並べられたテーブルへと腰を降ろす。
常盤は優雅に足を組むと、面白そうに一人笑った。腕を後ろにやって体勢を崩すと、幼い仕草で首を傾ける。
「暇だし、少し話そうよ」
子供っぽい表情と口調で常盤は語りかけた。組んだ足を揺らす彼は、これまでの無口で無愛想な印象とは違って見える。
暁也は非難するように目を細めると、修一にちらりと目配せした。その視線の意図に気づいた修一が「まさか」と言いたげな表情を浮かべる。
眉間に深い皺を刻むと、暁也は侮蔑するように常盤を見据えた。
「お前、薬物やってるだろ」
「ああ、すごくいい気分だよ。暗い視界でも君たちの顔がはっきりと見えるし、絶好調さ」
常盤は満足げに頷いた後、ブレザーのポケットから携帯電話を取り出して、画面を開き見た。
「だろうな。三階に当たるくらいなら、トラックがハイライトにしないと当たらねぇだろうし……」
三台目の光りが差しこんだ後、最後にやけに重々しい大型トラックの振動音と強い光を走り、それきりぴたりとやってこなくなった。
「トラックが全部で四台…………」
そう呟いて考え込む暁也のそばで、修一がふと「刑事ドラマみたいだな」といって冗談を続けた。
「常盤も持ってたし、暁也の親父さんが動くぐらいだから、トラックに詰め込めるくらい大量の違法薬物とかが関わっている事件だったりして」
え、と暁也は不意を突かれたような顔を向けた。
思い付きで言っただけの修一は、自分に向けられる視線から暁也が言わんとしていることを察し、笑顔を困惑へと移していった。「まさか、そんなの冗談だって」とうろたえてしまったとき――
二人の視界に入っていた扉の窓ガラスから、常盤の顔がにゅっと現れた。
修一が「ぎゃあ」と全身で叫び、暁也がぎょっとして後ずさった。扉の外にいた常盤が大きな声で笑ったかと思うと、鍵が開く音が上がり、続いて扉がスライドする。
「あはははは、驚き過ぎだろ。幽霊とでも思った?」
制服を着たままの常盤は、陽気そうな台詞を並べて室内に入ってきた。ボタンが閉められていないブレザーと、細い腰回りを覆う白いシャツの裾。いつもはきっちりしめられている紺色のネクタイも緩かった。
露骨に警戒する暁也と修一に気付くと、常盤は後ろ手で扉を半分だけ閉めて、わざとらしく肩をすくめた。
「やだなぁ、そんなに睨まないでくれよ」
「やばい事に足突っ込むなんて、利口じゃない奴のやることだぜ」
困惑する修一の前に立ち、暁也は常盤を睨みつけた。常盤は気にもならないように二人を通り過ぎ、放送機材の並べられたテーブルへと腰を降ろす。
常盤は優雅に足を組むと、面白そうに一人笑った。腕を後ろにやって体勢を崩すと、幼い仕草で首を傾ける。
「暇だし、少し話そうよ」
子供っぽい表情と口調で常盤は語りかけた。組んだ足を揺らす彼は、これまでの無口で無愛想な印象とは違って見える。
暁也は非難するように目を細めると、修一にちらりと目配せした。その視線の意図に気づいた修一が「まさか」と言いたげな表情を浮かべる。
眉間に深い皺を刻むと、暁也は侮蔑するように常盤を見据えた。
「お前、薬物やってるだろ」
「ああ、すごくいい気分だよ。暗い視界でも君たちの顔がはっきりと見えるし、絶好調さ」
常盤は満足げに頷いた後、ブレザーのポケットから携帯電話を取り出して、画面を開き見た。