月曜日から金曜日までの五日間、暁也は修一と共に雪弥と過ごした。大人しいだけの少年かと思いきや、雪弥は自分のことよりも第三者を考え、時には予想もつかいない行動を起こして暁也たちを驚かせた。
教室で一人の男子生徒が「この年頃になって母ちゃんと一緒に買い物なんて笑えるよな」と言ったとき、雪弥は「そんなこと言っちゃ駄目だよ、聞いている子を知らずに傷つけることだってあるんだから」と真っ直ぐに主張した。
普段三組のクラスメイトたちは、「またレッテル貼って」と迷惑そうにその男子生徒を見るだけだったのだが、反論意見が上がるのは初めてのことだった。その男子生徒に「じゃあお前はそうなんだ?」とからかわれる対象になるのが嫌なのである。
案の定、その時雪弥は「お前まだ母ちゃんと一緒に行動してるマザコンなんだろ」と笑いのタネにされたが、彼は平然と笑ってこう返した。
「両親や家族を大事にすることって大切だと思うよ。その対象が例えば母親だとしたら、僕たちは男で、彼女は女性でしょう? 僕たちは、助けられるときに手を差し伸べて、そして守ってあげるべきじゃないかな」
家族の繋がりって大事だよ、と雪弥は強調した。
その男子生徒を含むクラスメイトたちは、何も言い返せなかった。しばらくすると「確かになぁ」と賛同する意見が多数上がり、結局その男子生徒は「そうだよな、その、ごめんな。別に深い意味があったわけじゃないんだ」といって項垂れた。けれどからかわれたにも関わらず、雪弥はその男子生徒にこう続けたのだ。
「自分だけが大事に想っているのかなと思って、そんなことを言っただけだろう? 君は不器用なだけで、本当は優しい子なんだね」
フォローするような言葉だった。その少年は柔らかく諭され、後味悪くもならずに照れただけで済んだ。クラスメイトの誰も、その少年を嗤ったりしなかった。
雪弥は口数が少ないと思いきや、饒舌に話しを切り出すことがあった。初めての合同体育の授業の際は、てっきり運動音痴の真面目君かとマークされなかった彼が、一瞬にして点数を奪って盛り上がったときもある。
折り紙を初めて触ったとクラスメイトたちを驚かせ、野球のルールも知らずに百二十キロ以上の剛球を放ってピッチャーを泣かせた。小食かと思いきや、今日は修一ですら食べられないほどの量を、あっさりと胃袋に課おさめてしまった。
彼といると退屈しない。合同授業で一緒だった三組の西田たちが、最近よく四組に出没するという騒動も笑みが絶えないものだった。
「ったく、そんな奴に薬物とか、常盤の奴マジで馬鹿だろ」
色々と思い返して浸ってしまったせいで、暁也は彼らがどうして学校で待ち合わせするのかという疑問をすっかり忘れた。
教室で一人の男子生徒が「この年頃になって母ちゃんと一緒に買い物なんて笑えるよな」と言ったとき、雪弥は「そんなこと言っちゃ駄目だよ、聞いている子を知らずに傷つけることだってあるんだから」と真っ直ぐに主張した。
普段三組のクラスメイトたちは、「またレッテル貼って」と迷惑そうにその男子生徒を見るだけだったのだが、反論意見が上がるのは初めてのことだった。その男子生徒に「じゃあお前はそうなんだ?」とからかわれる対象になるのが嫌なのである。
案の定、その時雪弥は「お前まだ母ちゃんと一緒に行動してるマザコンなんだろ」と笑いのタネにされたが、彼は平然と笑ってこう返した。
「両親や家族を大事にすることって大切だと思うよ。その対象が例えば母親だとしたら、僕たちは男で、彼女は女性でしょう? 僕たちは、助けられるときに手を差し伸べて、そして守ってあげるべきじゃないかな」
家族の繋がりって大事だよ、と雪弥は強調した。
その男子生徒を含むクラスメイトたちは、何も言い返せなかった。しばらくすると「確かになぁ」と賛同する意見が多数上がり、結局その男子生徒は「そうだよな、その、ごめんな。別に深い意味があったわけじゃないんだ」といって項垂れた。けれどからかわれたにも関わらず、雪弥はその男子生徒にこう続けたのだ。
「自分だけが大事に想っているのかなと思って、そんなことを言っただけだろう? 君は不器用なだけで、本当は優しい子なんだね」
フォローするような言葉だった。その少年は柔らかく諭され、後味悪くもならずに照れただけで済んだ。クラスメイトの誰も、その少年を嗤ったりしなかった。
雪弥は口数が少ないと思いきや、饒舌に話しを切り出すことがあった。初めての合同体育の授業の際は、てっきり運動音痴の真面目君かとマークされなかった彼が、一瞬にして点数を奪って盛り上がったときもある。
折り紙を初めて触ったとクラスメイトたちを驚かせ、野球のルールも知らずに百二十キロ以上の剛球を放ってピッチャーを泣かせた。小食かと思いきや、今日は修一ですら食べられないほどの量を、あっさりと胃袋に課おさめてしまった。
彼といると退屈しない。合同授業で一緒だった三組の西田たちが、最近よく四組に出没するという騒動も笑みが絶えないものだった。
「ったく、そんな奴に薬物とか、常盤の奴マジで馬鹿だろ」
色々と思い返して浸ってしまったせいで、暁也は彼らがどうして学校で待ち合わせするのかという疑問をすっかり忘れた。