尾賀は今回、自身の暗殺集団を引き連れていた。ブラッドクロスでは駒となる人員に肉体強化が行われており、尾賀は素手で人の頭がい骨を砕く大柄で屈強な部下を与えられていた。
それは佐々木の持つ組員よりも、はるかに使える頼り甲斐ある部下たちだ。三台のトラックを運転する三人もそうである。二台のトラックはこれから入荷する商品を乗せるので荷台は身体が、後尾列のトラックには十二人の部下が待機している。
肉体強化が行われた男たちは、ブラッドクロスによって脳を弄られているため命令には忠実だ。しかし、それ以上の人材が今は求められていた。特殊筋を持った家系から突然変異として生まれる「化け物」を、意図的に作り出す計画が「強化兵」である。
尾賀は、自身の手首サイズに合わせた細い腕時計を見やった。「明美と落ちあわないといけないね」ときぃきぃとした耳障りな声で呟く。
実験に必要な材料を集める役目だった尾賀は、ブルードリームについて李がまくしたてる事は分からないでいた。とはいえ、同じ中国系として、取引のビジネスでは約七年の付き合いがあることもあり、小うるさい老人の性格はよく知っているつもりだった。
李はせっかちだ。取引の時刻前には学園に到着するだろう。尾賀はそう踏んでいた。明美が迎えに行くという段取りは、そこで変わるに違いない。
李に取引について再確認するのは明美ではなく、出迎える富川か学園に待機している藤村のどちらかになるのだ。そうなると、明美は予定の時間を繰り下げて自分と落ち合う可能性がある。
彼女を学園に送ってから、報告といったやりとりは全て電話になっていた。今のところ何も問題なく進んでいるが、尾賀としては今後も付き合っていくうえで、明美が見た学園側の人間の詳細について話を聞きたいとも思っていた。
とはいえ、金曜日とあって高速道路は予想以上に少々混んでもいた。 時間が間に合えば、取引前に直接報告を聞く事が出来るだろうが、少しされは難しそうだとも尾賀は予想してもいた。
彼女は富川の相手をしているので、無理であれば、諦めて後日にタイミングを見計らって東京に呼ぶか、こちらからこっそり出向かなければならないだろう。少し面倒ではあるが、使う手駒の情報については、個人的な趣味や性質なども知っていた方が何かとやりやすいのも事実だ。
榎林が、自身のパイプをつかって見付けた富川がそうだった。相手側が富川をよく知っていたおかげで、尾賀は明美を使って今回の取引の場所の協力者として、彼を引き込む事に成功したのである。
「おい、速度を上げろ」
尾賀はそう指示した。運転席に座っていた男が返事もなくアクセルを踏み込み、夜も深まった高速道路で、高知県方面へと向かう三台の大型トラックが加速した。
それは佐々木の持つ組員よりも、はるかに使える頼り甲斐ある部下たちだ。三台のトラックを運転する三人もそうである。二台のトラックはこれから入荷する商品を乗せるので荷台は身体が、後尾列のトラックには十二人の部下が待機している。
肉体強化が行われた男たちは、ブラッドクロスによって脳を弄られているため命令には忠実だ。しかし、それ以上の人材が今は求められていた。特殊筋を持った家系から突然変異として生まれる「化け物」を、意図的に作り出す計画が「強化兵」である。
尾賀は、自身の手首サイズに合わせた細い腕時計を見やった。「明美と落ちあわないといけないね」ときぃきぃとした耳障りな声で呟く。
実験に必要な材料を集める役目だった尾賀は、ブルードリームについて李がまくしたてる事は分からないでいた。とはいえ、同じ中国系として、取引のビジネスでは約七年の付き合いがあることもあり、小うるさい老人の性格はよく知っているつもりだった。
李はせっかちだ。取引の時刻前には学園に到着するだろう。尾賀はそう踏んでいた。明美が迎えに行くという段取りは、そこで変わるに違いない。
李に取引について再確認するのは明美ではなく、出迎える富川か学園に待機している藤村のどちらかになるのだ。そうなると、明美は予定の時間を繰り下げて自分と落ち合う可能性がある。
彼女を学園に送ってから、報告といったやりとりは全て電話になっていた。今のところ何も問題なく進んでいるが、尾賀としては今後も付き合っていくうえで、明美が見た学園側の人間の詳細について話を聞きたいとも思っていた。
とはいえ、金曜日とあって高速道路は予想以上に少々混んでもいた。 時間が間に合えば、取引前に直接報告を聞く事が出来るだろうが、少しされは難しそうだとも尾賀は予想してもいた。
彼女は富川の相手をしているので、無理であれば、諦めて後日にタイミングを見計らって東京に呼ぶか、こちらからこっそり出向かなければならないだろう。少し面倒ではあるが、使う手駒の情報については、個人的な趣味や性質なども知っていた方が何かとやりやすいのも事実だ。
榎林が、自身のパイプをつかって見付けた富川がそうだった。相手側が富川をよく知っていたおかげで、尾賀は明美を使って今回の取引の場所の協力者として、彼を引き込む事に成功したのである。
「おい、速度を上げろ」
尾賀はそう指示した。運転席に座っていた男が返事もなくアクセルを踏み込み、夜も深まった高速道路で、高知県方面へと向かう三台の大型トラックが加速した。