くぐもる言葉のあと、鴨津原の手から銃が滑り落ちた。前触れもなく彼の身体が崩れ、榎林が弾くように「早くレッドドリームを!」と喚く。
「早くレッドドリームを飲ませろ! せっかくの実験体なんだぞ! 早く飲ませて実験を――」
瞬間、榎林の語尾がひしゃげた。
上ずった言葉が行き先を見失い、力なく語尾の「お」の言葉を乗せた呼吸が傾斜して、その声が不自然に潰れる。
頭部がなくなった短身のねじ切れた首根から、勢いよく血液が噴き出していた。宙を浮いたままの榎林の顔が、一瞬の絶命でだらしなく頬肉を垂れ下げる。彼の後ろには瞬間的に回り込んだ雪弥がいて、俯いたまま彼の胴体から捻り取った頭部を左手で掴み上げていた。
ぐらりと榎林の身体が揺れて、司令塔を失った両手足がおぼつかないまま数歩前進した。
首を失った短身の男が、隣にいた佐々木原の腹部から顔に細かい赤を散布させて、ぐしゃりと崩れ落ちた。その際、止まらぬ血飛沫が柿下の顔面から下を染め上げ、この世のものとは思えない光景に、彼の細い喉から甲高い女の悲鳴が上がった。
『素晴らしい!』
スピーカーから、そんな場違いな声がもれた。
僅かな放心状態の直後、驚異的な精神力で恐怖を押し殺した佐々木原が、「くそぉ!」と銃を構えたがもう遅かった。瞬時に銃を取り出した雪弥が、持っていた首をコンクリートへ向けたまま、至近距離から佐々木原の顔に銃口を向けたのだ。
三発の銃弾が佐々木原の顔を抉った矢先、瞬時に銃先が向きを変えて、続いて柿下に向けられて容赦なく残りの銃弾か放たれた。
連続して発砲音が上がったあと、銃のレバーを引き続けていた雪弥の指元から、カチカチカチカチ、としばらく乾いた音が続いた。ようやく弾がなくなったと気付いたように、静まり返った静寂を聞いた彼の手から榎林の首が落ちる。
ごとん、と音を立てて転がった首は、コンクリートに大きな血の印を押しつけた。銃を降ろした雪弥の足が、前触れもなくそれを踏み砕き、弾かれるように目玉と脳を飛び散らせた。
それを見下ろす雪弥の黒いコンタクトレンズが入った瞳は、蒼く色づいて見開かれていた。血だまりに足をねじりこんだ彼の顔には、表情がない。
『そうか、あの学生が呼んだなが正しいとすると――なるほど、君が蒼緋蔵家の雪弥だったわけだ』
スピーカー越しに名を呼ばれ、雪弥はじろりと目を動かせた。
「蒼緋蔵がここで関係ありますか」
問い掛ける声は怒りが滲んで低い。相手からの返答を待つ数秒の沈黙の間に、雪弥はその声の主が「夜蜘羅」と呼ばれていたことを思い出した。
「早くレッドドリームを飲ませろ! せっかくの実験体なんだぞ! 早く飲ませて実験を――」
瞬間、榎林の語尾がひしゃげた。
上ずった言葉が行き先を見失い、力なく語尾の「お」の言葉を乗せた呼吸が傾斜して、その声が不自然に潰れる。
頭部がなくなった短身のねじ切れた首根から、勢いよく血液が噴き出していた。宙を浮いたままの榎林の顔が、一瞬の絶命でだらしなく頬肉を垂れ下げる。彼の後ろには瞬間的に回り込んだ雪弥がいて、俯いたまま彼の胴体から捻り取った頭部を左手で掴み上げていた。
ぐらりと榎林の身体が揺れて、司令塔を失った両手足がおぼつかないまま数歩前進した。
首を失った短身の男が、隣にいた佐々木原の腹部から顔に細かい赤を散布させて、ぐしゃりと崩れ落ちた。その際、止まらぬ血飛沫が柿下の顔面から下を染め上げ、この世のものとは思えない光景に、彼の細い喉から甲高い女の悲鳴が上がった。
『素晴らしい!』
スピーカーから、そんな場違いな声がもれた。
僅かな放心状態の直後、驚異的な精神力で恐怖を押し殺した佐々木原が、「くそぉ!」と銃を構えたがもう遅かった。瞬時に銃を取り出した雪弥が、持っていた首をコンクリートへ向けたまま、至近距離から佐々木原の顔に銃口を向けたのだ。
三発の銃弾が佐々木原の顔を抉った矢先、瞬時に銃先が向きを変えて、続いて柿下に向けられて容赦なく残りの銃弾か放たれた。
連続して発砲音が上がったあと、銃のレバーを引き続けていた雪弥の指元から、カチカチカチカチ、としばらく乾いた音が続いた。ようやく弾がなくなったと気付いたように、静まり返った静寂を聞いた彼の手から榎林の首が落ちる。
ごとん、と音を立てて転がった首は、コンクリートに大きな血の印を押しつけた。銃を降ろした雪弥の足が、前触れもなくそれを踏み砕き、弾かれるように目玉と脳を飛び散らせた。
それを見下ろす雪弥の黒いコンタクトレンズが入った瞳は、蒼く色づいて見開かれていた。血だまりに足をねじりこんだ彼の顔には、表情がない。
『そうか、あの学生が呼んだなが正しいとすると――なるほど、君が蒼緋蔵家の雪弥だったわけだ』
スピーカー越しに名を呼ばれ、雪弥はじろりと目を動かせた。
「蒼緋蔵がここで関係ありますか」
問い掛ける声は怒りが滲んで低い。相手からの返答を待つ数秒の沈黙の間に、雪弥はその声の主が「夜蜘羅」と呼ばれていたことを思い出した。