「名前と人数は確認済みで、パーティーだって言って大学校舎の一部に集まる予定だ。あいつらが勝手に配った人間も、ちゃんと調べて把握してる。まだ知らない奴がいるかもしれないから、念のため声を掛けるつもり」

 常盤は青い覚せい剤を配るとき、親しい素振りで相手の学生と距離感を縮め、頻繁にメールのやりとりをしていた。今のところ全員問題なく過ごしており、時々しか連絡のない大学生に関しては、連絡のほとんどが薬の催促のみだ。

 大学生同士で配りあって連絡先を交換していない生徒も数人いるが、声を掛けた学生とは交流を持っているので、彼らに頼んできちんと明日の覚せい剤パーティーについては伝言させてある。そろそろ薬が切れる頃合いだったせいか、里久からは早朝という珍しい時間にすぐ「楽しみにしてる」と返事がきていた。

「昨日急に聞いたからさ、参加できない奴が出て来ないか俺は心配だよ」
「あんたなら上手く話を乗せられるでしょ。とにかく全員出席させるのよ。しくじったら、今後の取引に大きく関わるんだから」

 常盤は「分かってるよ」と答えたが、湧きだした興奮や意欲はいつもの半分にも満たなかった。こんなときに相棒がいれば、とつい思ってしまったせいだ。

 細腕を組んだ明美は、表情硬く考えに耽っていた。気付いた常盤が顔を上げて「どうしたんだよ」と尋ねても、整った顔を顰めて白い床を睨みつけ、動く様子がない。質問を理解しているようだが、「うん」と答える返答は短く曖昧だった。

「…………順調に進んでるし、あたしだって慎重に行動してる。でも、なんだか嫌な予感がするのよ」
「珍しいな」

 思わず、常盤は疑問の声を発してしまう。