「分からないよ。それは特別に愛せる価値のある人間を、自分で作るということか……?」
「違うわ。自分が腹を痛めて産んで、そうして私の血が流れている。ただ一人、私が無償で愛せる子よ」

 彼女は微笑んだ。まるで、既に子を持った母親のような、深く聡明な眼差しをしていた。

 私は、どうすればいいのかを深く考えた。そうして、話す中で見付けてしまった彼女の寂しさに目を瞑る事が出来なくて、こう提案していた。

「――それなら、まずは話をしよう」
「話し?」
「僕と君は、全く知らない者同士だ。男だからといって、僕はそんな中では君と愛し合う事は出来ない。気に入らないのなら、諦めてくれても構わないよ」

 性行為の知識があるのなら、彼女にも言葉の意味は理解出来るだろうと考えて、私はそう話した。

 彼女は、このままでは身体の関係は難しいらしい、と意味を汲んだようだ。怪訝な表情を浮かべ、ほどなくして思案を終えると「仕方ないわね」と言った。