「悪いけど、これ以上は付き合っていられない」

 私は、彼女をここで振り切る作戦に出た。バッサリ断って踵を返したら、すぐに彼女が後をついてきた。

 そのまま大学に戻れば、変な噂になりかねない。そう考え至った私は、かなり困ってしまった結果、とうとう諦めて少し歩いた距離にある公園のベンチに腰を下ろした。

 彼女が当然のように隣に腰かけてきた。

 こうなったら、諦めてくれるまでやるしかない。

 そう覚悟を決め、私は大学に残っている机仕事を遅らせてしま事にして、説得と断りを続けた。

 だが彼女の意思は、鋼のように固くかった。私の知っている常識では、到底太刀打ちできないと悟ったのは、公園から見える時計台の針が午後三時の鐘を打った頃だ。

「僕の説得の時間は、いったいなんだったんだろうなぁ……」

 喉と頭脳が疲弊し切った私は、彼女と共に公園内にある人工の湖を、しばし眺めていたところでぼやいてしまった。

 説得を諦めた私は、続いて、彼女の対象者から矛先を変えようと少しだけ話してみた。そうしたら、呆れた事に彼女は、私の顔にあるホクロが気に入ったのだとか、訳の分からない回答をしてきた。