拓実と別れた後、まっすぐアパートに戻った。

 風呂を上がってみると、タイミングを合わせたかのように佐藤から一通のメールが入っていた。先に帰ってすまんな、良い休暇を、という悪びれもない内容だった。

 ヨリは、奢ってくれた先輩に文句の一つも添えなかった。今日は御馳走になりました、とお礼の内容を返信した。

 例の手紙を手に、二十分ほどソファに座り込っていた。しばらく冷房の効いた部屋で寛いでいると、アルコールを摂取した身体の火照りも次第に引き始めた。

 全て、手紙に書いてある、と拓実は言っていた。

 自分の知らない――いや、自分や彼ら姉弟も知らないでいた過去の話。これまで封をされていたかのような秘密をこじ開けるようで、書かれている内容に不安はあった。

 だから、酔いが冷めるのも待たずに読むつもりだった。

「母さんが話していなかった、過去の全てがここにある……」

 物憂げに呟いたヨリは、心を決めると封筒の中身を取り出した。

 白い用紙に印刷された便箋には、とても整った優しげな字が綴られていた。冒頭には、死んだ後も妻に明かす決意が出来なかった事への詫び。そうして、


【私の秘密を知って欲しい我が子達へ】


 と言葉を置いて、まずは謝罪文から始まっていた。

 そして、ヨリはとうとう、本題となる「告白」の文章へと長い時間を割く事になった。

            ※※※

 私は幼い頃に両親を亡くし、家族で過ごした団欒の思い出が少なかった。

 遠い親戚が何人かいたが、当時は子供の数が多く、不況で食うに困る時代でもあった。私は親戚の家の中に居場所がなく、十六歳で家を出て、自分の力で暮らしださねばならなかった。

 しかし、それは辛い思いばかりではない。