まるでドラマみたいな話だけど、俺には姉しかいないと思っていたから、少し気になって調べた。探偵会社から写真をもらったら余計に気になって……まさかこんな風に話しをする日がくるとは思わなかったのだ、とも話した。

「僕もだよ」

 座り直して話を聞いていたヨリは、グラスの中で溶けていく氷の動きを見つめながら答えた。茉莉に接客された時、まさか声をかけられるとは思っていなかった事を思い出していた。

 考えてみれば、お互いが探偵会社を利用していたというのも奇遇な共通点だ。

 その点で言えば後ろめたさがなくなったみたいに、気付けば二人してぎこちなく笑っていた。どちらともなくグラスを手にとって、乾いた口の中に酒を流し入れた。

「そういえば、君はこの話を遺言で知った、と言っていたけど」
「ああ、親父が――父が亡くなった時に、俺らに渡すよう弁護士が預かっていた手紙があったんです」

 拓実が、慌てたように呼び方を言い直した。普段は父を「親父」と呼んでいたのだろう。ヨリは、先程の佐藤との元気なやりとりを思い出しながら、そんな事を思った。

「弁護士が預かっていたというのは、生前に本人が書いた手紙で間違いない……?」
「はい、そうです。そこに、あなたの名前が書いてあったので、俺もすぐ探偵に捜してもらえました。珍しい名字でしたし」

 拓実は泣き腫らした顔を上げて、どこか少年染みた弱々しい笑みを浮かべた。

 ――手紙の中に、僕の名前があった?