「見てみようと思っていたのは、俺も同じです。俺はあなたの姿を写真で知った時、どうにかして見られないものかと考えていました。そんな時に、姉から連絡があって、ますますその思いが強くなりました。だから、会社の訪問に付いていったんです。……そうしたら、あの佐藤さんがかわりに出てきましたけど」
「それは、なぜ?」

 どうしてそこまで、とヨリが横目に見やると、拓実はぎこちなく笑った。
「俺達からしたら、あなたの方が父の面影が強いんですよ」

 グラスの中で、新たに氷が崩れる音が上がった。

 拓実が、一度酒で喉を潤した。カウンターに腕を置いて視線を落としたまま、小さな声で話しを続ける。

「さっきの店で、初めてあなたを見た時も……正直驚きました。写真よりも似ていて、姉が『とても似ている人が来た』と連絡してきたのも、分からないでもないな、て」

 カウンターの上に置かれた拓実の手が、きゅっと拳を作った。

 ヨリは、話す彼の横顔を見つめていた。

「あなたは父を知らないから、もちろん実感はないんでしょう。父はそんなに整った顔ではありませんでしたし、クールではありませんし、よく穏やかに笑っている人で……でも、全然違うのに、それなのにどうして、こんなにも似ているんでしょうね」

 語る拓実の声は、震えていた。そこでぴたりと話は続けられなくなってしまって、気になって覗き込めば、彼は嗚咽を押し殺して泣いていた。

 ヨリは、彼が父親を深く愛していたのだと気付いた。彼はまだ二十二歳だ。亡くなって日も浅い事もあるから語るのも辛いはずだった。彼の父親は、それだけ愛し、愛されていた人だったのだろう。

「ごめん」

 他に言葉も浮かばなくて、ヨリはそう声をかけて背中をさすった。そしたら拓実が、視線を落としたまま首を左右に振ってきた。