ヨリに動揺はなかった。正直に話してくれた彼に、自分も君達の事は調べていたと話すべきだろうかと思案する。その間、横顔に彼のしげしげと窺う視線を感じていた。

「えぇと……。あの、失礼ですがヨリさんに父親は……?」
「いない。母は、誰とも結婚せずに僕を産んだから」

 ヨリは思案しつつも、冷静にスパッと答えた。

 拓実は、その様子を冷ややかなものとでも勘違いしたのか。食い入るように見つめていたヨリの横顔から、慌てて目をそらすと「すみませんっ」と早口で謝った。

「俺も信じられないんですけど、俺の父親と、あなたの父親が同じみたいでして……。その、血が半分だけ繋がっているといわれても、俺も突然の事で実感出来なくて、それで探偵に調べてもらったんです」
「父親が同じ……」

 僕は以前から、別家庭を築いているだろう彼の存在は知っていた。

 そう言って打ち明けようと思ったのに、その言葉は喉元につかえて出てこなかった。ヨリとしても、どう切り出せばいいのか分からないでいた。

「……それを知っている人は、他にいる?」
「えっ、あ、父の遺言の一つで知ったんですけど、実は他に子供がいる事を打ち明けられたのは、俺と姉だけです」

 そこで自分の説明不足に気付いたのか、拓実がパッとヨリへ顔を向けた。

「俺には姉がいるんです。でも探偵に依頼したのは俺の独断で、勝手にやった事というか! えぇと父は大学の教師をしていたんですけど、病気が悪化して入院生活を送っていて。父が死んだ後に、俺達は弁護士の方から手紙を渡されて――」
「知ってた」

 ヨリは、半ばパニックになったような拓実の話を遮った。