探偵に調べてもらっていた。

 そう打ち明けたところで、拓実の言葉が途切れた。どこから話したらいいのか、悩んでいるようだった。どう話せばうまく伝わるのだろうかと、真剣に考える表情をしていた。

 気を利かせてくれたのだろう。いつの間にか、マスターの姿はカウンターの奥へといって姿が見えなくなっていた。

「探偵に調べてもらった、と言ったけれど、それは事実?」

 続く沈黙へのフォローが分からなくて、困ったヨリは先を促すつもりでそう尋ねてみた。

「はい。その、姉には内緒で、探偵会社に連絡を取って……」

 膝の上で作った拳に目を落とした拓実が、気まずそうに答えた。ヨリは、他に相槌の言葉は浮かばなくて「そう」とだけ答えた。

 再び会話が途切れて、店内のスピーカーから流れるクラシック音楽だけがしていた。ほどなくしてグラスの中で、溶けた氷がカラン、と音を立てた。

「先月、父が亡くなったんです」

 拓実が、勇気を振るい立たせるように声を絞り出した。

「その時に、俺は初めてあなたの事を知って……その、なんて言ったらいいのか……」

 そこで、彼がチラリとヨリを上目に見た。

「もし、会ったばかりの人に、突然『実は腹違いの兄弟がいる』なんて言われても、困り、ますよね……?」

 反応を窺われながら、そう確認された。

「そうかもしれない」

 ほとんどの場合はそうなるだろう。自分の父親となった男が、どこかで家庭を築いているのだろうと幼い頃から考えていなければ――。