カフェ店で働いている茉莉の弟、拓実。
少し癖のある短い髪、茉莉と同じ日焼けとは縁のない白い肌。着ているスーツはブルー混じりの清楚なもので、幅に若干余裕がある。
探偵会社から手渡された報告書で写真は見たが、実物はやや華奢で幼い印象があった。まさか、こんなところで彼女の弟の顔を拝める事になろうとは予想外だ。
佐藤はヨリの父親の件は知らないので、偶然にもこの青年を連れてくる事になった経緯が気になった。
けれど、彼が誰かを連れてくるのは珍しくもない。ひとまずヨリは、相当腹が減っていたらしい佐藤の豪快な食べっぷりを眺めながら、いつも通りまずは商品の到着を待った。
拓実は、ヨリが入室した際にチラリと視線は向けてきたものの、それ以降は美味しくもなさそうに唐揚げ定食を引き続き食べていた。自己紹介をする様子もないので、望んでこの食事会に参加した訳ではないのだろう事が窺えた。
しばらくもしないうちに、ヨリが注文した商品が到着した。
食べ始めて数分後、自由な男、佐藤がカツ丼を完食して「ごちそうさん!」と元気に言った。その一旦満足した朗らかな横顔を、拓実が恨めし気に睨見つける。
――そもそも、この二人は面識があったのか?
ふと、今更のようにそんな事を思った。すると、ヨリが一瞬だけ箸を止めた時、腹が満たされて姿勢を楽にした佐藤が、思い出したようにこう言った。
「こいつ、システム会社の、若手の有澤拓実君。昨日、須藤さんとウチの会社に来てさ。昨日は社長も交えて、須藤さん達と飲んだんだぜ」
「つまり佐藤さんは、出会い頭に彼を気に入って意気投合した、と?」
少し癖のある短い髪、茉莉と同じ日焼けとは縁のない白い肌。着ているスーツはブルー混じりの清楚なもので、幅に若干余裕がある。
探偵会社から手渡された報告書で写真は見たが、実物はやや華奢で幼い印象があった。まさか、こんなところで彼女の弟の顔を拝める事になろうとは予想外だ。
佐藤はヨリの父親の件は知らないので、偶然にもこの青年を連れてくる事になった経緯が気になった。
けれど、彼が誰かを連れてくるのは珍しくもない。ひとまずヨリは、相当腹が減っていたらしい佐藤の豪快な食べっぷりを眺めながら、いつも通りまずは商品の到着を待った。
拓実は、ヨリが入室した際にチラリと視線は向けてきたものの、それ以降は美味しくもなさそうに唐揚げ定食を引き続き食べていた。自己紹介をする様子もないので、望んでこの食事会に参加した訳ではないのだろう事が窺えた。
しばらくもしないうちに、ヨリが注文した商品が到着した。
食べ始めて数分後、自由な男、佐藤がカツ丼を完食して「ごちそうさん!」と元気に言った。その一旦満足した朗らかな横顔を、拓実が恨めし気に睨見つける。
――そもそも、この二人は面識があったのか?
ふと、今更のようにそんな事を思った。すると、ヨリが一瞬だけ箸を止めた時、腹が満たされて姿勢を楽にした佐藤が、思い出したようにこう言った。
「こいつ、システム会社の、若手の有澤拓実君。昨日、須藤さんとウチの会社に来てさ。昨日は社長も交えて、須藤さん達と飲んだんだぜ」
「つまり佐藤さんは、出会い頭に彼を気に入って意気投合した、と?」