だからだろうか。子だけが欲しかったという母と、それを提案されて受け入れた男に対して、どんなやりとりがあって合意されたのだとか、想像しても謎だらけだ。

 ――直に会った際に、尋ねてみようか?

 ヨリは、壁に掛かっているカレンダーへと目をやった。先日の電話で、母は紹介したい店があると言っていたから、しばらくもしないうちに食事の詳しい日時の連絡があるだろう。

 しかし、その案についてはすぐ諦めた。

 これまでも尋ねた事があるのに、この現状だ。彼女は、いつだって自分かヨリの事しか関心がない。

 良いも悪いも、ヨリは深く考えず悩まない生き方をしてきた。彼自身、曖昧なままに終えてきてしまったものも多い。それが、これまでの彼の生き方だったはずだ。

「僕は、何がしたかったんだろうな」

 目を閉じれば、何故かゴミ箱の中を満たした紙屑が思い浮かんだ。