突然現れた瀬名くんにマジトーンで告白される。
この人は人をからかう事が趣味なのだろうか。
「私には会ってもくれなかったのに!」
そうもらったタオルでバシッと桐原くんの肩を叩いた香川さんは、
「まぁでも、手紙一つで桐原の心が動くなんて、綿世さんすごいね」
そう感心したように言った。ちらりと桐原くんを見やる。
——ほんとうは。
来てくださいとお願いする文は少しだけで、あとはほとんど香川さんのことを書いた。
誰かに〝幸せ〟を願ってもらえるのはとても素晴らしいことだと思う。
香川さんにとって桐原くんには、せめて文化祭ぐらい楽しんでほしい、とそう願える対象の人だった。
醜い感情ばかりが蠢くこの世界で、そんな綺麗な感情は消えてほしくなかった。ちゃんと、桐原くんに届いてほしかった。
それは私の勝手でわがままな思いだけれど、それでも、
「なんだよ」
そんな怖い顔をする彼に、少しでもやさしさの明かりが灯ってくれたなら、それだけで世界は綺麗に見えるような気がした。
「なんでもないです!」
「言っとくけど、お前らのために来たんじゃないからな」
「はいはい、桐原って本当素直じゃないよね」
「あ? お前あんま調子のってると泣かすぞ」
「あ、あの二人とも、落ち着いて」
「いいじゃん綿世さん、面白いから放っておこうよ」
「瀬名くんはまた適当な事ばっか言って」
読書感想文がまた新しく貼りだされていた。
あの悪口満載の感想文はもう貼られることがなくなって……と言うか、もう書くことを卒業し、今はあの綺麗な感想文だけが貼られている。
〝この世界が本当にあるなら、きっとここの住人にはなれないのだろう。あまりにも綺麗過ぎるから。あまりにも眩しすぎるから。そこは、自分にとって一番近付きたくて、一番近付けない世界なのかもしれない〟
そんな言葉が最後に添えられていた。
家族愛がテーマとなったこの作品は、一度は崩壊した家族がまた、もう一度家族になろうと奮闘するストーリーだった気がする。
眩しい、と私はこの本を読んで感じなかったけれど、これを書いた人にはそう見えたのか。受け取り方が自由なのが創作物のいいとこと。正解も間違いもない。
〝ここに行けるなら、それは生きてるうえでこのうえなく幸せ者だ〟
感想文内の一言が頭から離れなかった。
幸せの定義なんてそんなものはこの世界にあってないようなもの。人それぞれ幸せの価値観は違う。
「幸せ……」
私の幸せとは、一体なんだろうか。
この人は人をからかう事が趣味なのだろうか。
「私には会ってもくれなかったのに!」
そうもらったタオルでバシッと桐原くんの肩を叩いた香川さんは、
「まぁでも、手紙一つで桐原の心が動くなんて、綿世さんすごいね」
そう感心したように言った。ちらりと桐原くんを見やる。
——ほんとうは。
来てくださいとお願いする文は少しだけで、あとはほとんど香川さんのことを書いた。
誰かに〝幸せ〟を願ってもらえるのはとても素晴らしいことだと思う。
香川さんにとって桐原くんには、せめて文化祭ぐらい楽しんでほしい、とそう願える対象の人だった。
醜い感情ばかりが蠢くこの世界で、そんな綺麗な感情は消えてほしくなかった。ちゃんと、桐原くんに届いてほしかった。
それは私の勝手でわがままな思いだけれど、それでも、
「なんだよ」
そんな怖い顔をする彼に、少しでもやさしさの明かりが灯ってくれたなら、それだけで世界は綺麗に見えるような気がした。
「なんでもないです!」
「言っとくけど、お前らのために来たんじゃないからな」
「はいはい、桐原って本当素直じゃないよね」
「あ? お前あんま調子のってると泣かすぞ」
「あ、あの二人とも、落ち着いて」
「いいじゃん綿世さん、面白いから放っておこうよ」
「瀬名くんはまた適当な事ばっか言って」
読書感想文がまた新しく貼りだされていた。
あの悪口満載の感想文はもう貼られることがなくなって……と言うか、もう書くことを卒業し、今はあの綺麗な感想文だけが貼られている。
〝この世界が本当にあるなら、きっとここの住人にはなれないのだろう。あまりにも綺麗過ぎるから。あまりにも眩しすぎるから。そこは、自分にとって一番近付きたくて、一番近付けない世界なのかもしれない〟
そんな言葉が最後に添えられていた。
家族愛がテーマとなったこの作品は、一度は崩壊した家族がまた、もう一度家族になろうと奮闘するストーリーだった気がする。
眩しい、と私はこの本を読んで感じなかったけれど、これを書いた人にはそう見えたのか。受け取り方が自由なのが創作物のいいとこと。正解も間違いもない。
〝ここに行けるなら、それは生きてるうえでこのうえなく幸せ者だ〟
感想文内の一言が頭から離れなかった。
幸せの定義なんてそんなものはこの世界にあってないようなもの。人それぞれ幸せの価値観は違う。
「幸せ……」
私の幸せとは、一体なんだろうか。