「これを選ぶことで成長しますってのは難しいけど、それぞれが今、ちゃんと目の前にあるものと向き合うことが大事だと思う」
 私は──。
 私は、最低だ。
「少なからずそれは成長に繋がると思う」
 真剣に考えてよ、と捨て台詞のように瀬名くんに言ってしまった。
 私なんかよりも考えてくれていたのに。私なんかよりもこの状況を冷静に判断して、これだけの候補を出してきてくれてたのに。
「迷路は他と被るからなしにしてるけど、宝探しとかそういうのだったらいけると思う」
 私は、何も考えてなかった。
 焦りとか、不安だけに駆られて、ただどうしようと嘆くばかりで、なんとかしようという気持ちはなかったのだと思い知らされる.
「いろいろ考えたけど、まぁこの候補だったら妥当じゃない?」
 そうまとめた彼に、異論を唱えるものはいなかった。
 出された候補は、ただ単にあげられたものではなく、誰々がこれを出来るからとクラスメイトのことを考えて出されたものだった。
「すごいね、瀬名くん一人で考えてたの?」
 あれだけ流れていた不穏な空気が一変し、今では彼を称賛する声までちらほらと聞こえてくる。
 私なんて、ここにいなくてもいい。
 渡辺さんの言う通り、ただ立ってるだけの、なんの価値もない人間。
 私が選ばれたこと自体、間違いだったんだ。
「この中で出来なさそうなやつ省いていくから声出してって」
「……あ、じゃあ脱出ゲーム、とか? 体育館も借りられてるとなると教室だよね?狭くて難しいんじゃないかな?」
 沈黙が続いていたのが嘘のように「あれは」「これが」と意見があがってくる。
「よし、じゃあこんな中から決めるってことで、……綿世さん」
「え」
 無数の視線が、一気に注がれ思わず思考が停止する。
「ある程度省いたから、あとは綿世さんが決めてよ」
 存在価値のない私に、瀬名くんは最後を託した。
 突然、決定権が委ねられ困惑を滲んでいく。
「あ……えっ、と」
 委縮しきった声が微かに漏れ出る。
 こんな重大な責任を、ただ立ってるだけだった私に任せられるなんていいのだろうか、名ばかりの委員ってだけの私に。
「綿世さん」
 そっと、やさしく落とされる瀬名くんの声に顔をあげる。
「綿世さんも、委員でしょ」
 それは、私に対しての〝当事者〟としての自覚を持たせているような口調で、
「いいよ、なんでも」
 責任を押し付けるとか、そんな汚い感情ではなくて、本当に委員としての決定権を私にくれているようなものだった。
 教室を恐る恐る見渡せば、全員と目が合う。
 発言を純粋に待ってるような顔の人もいれば、渡辺さん達のように面白くないといった顔をしてる人もいる。
 怖くて、足が竦みそうになる。
 発言することが怖い。間違った選択をしてしまいそうで怖い。受け入れられないとなるともっと怖い。
「綿世さん」
 それでも、瀬名くんが珍しくやさしい声で呼んでくれる。まるで〝大丈夫〟だと言ってくれてるみたいな温かい声色で。
「わ、私は——……」