いつもより豪華な食事と誕生日ケーキを食べ、部屋に戻り、私は正常に機能しているかも定かではない脳を動かした。

このままで良いとは思わない。けれど、どう在るべきかも分からない。社会に出てやっていけるだろうか。不登校、高校中退、ニート。社会に出て行ける要素がひとつもない。社会不適合者とは、私のことを言うのかもしれない。全てにおいて不敵切な存在。世界に認められる気はしない。


これからどうしようか、どうするべきか。

数分考えたけれど、人生はやはり分からなくて、ベッドに転がった。母が晴れた日に天日干ししてくれる枕からは、微かに太陽の匂いがする。それが、少しだけ苦手だった。


​──ブーッ、ブーッ

スマホが鳴った。連絡を取り合うような相手はいないので、聞き慣れない音だった。画面には、〈知世〉と表示されていた。


知世。

記憶に一人だけ、その名前を持つ者がいる。


どうして今更電話がかかってきたのか分からなかった。スマホを初めて持ったのは中学生の時だ。番号を変えていないから、「知世」に連絡先を知られていることは不思議ではなかった。けれど、だからと言って理解出来ることでもなかった。戸惑って応答ボタンを押せずにいると、一定数のコールを終えて、自動的に着信は切れた。

ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、数秒後もう一度着信があった。知世からだった。電話に出るまで掛かってくるような、そんな気がした。直感というものを働かせたのは久しぶりで、到底当てにはならないけれど、なんとなく、当たる気もしていた。予想通り、二度目の着信が切れ、三度目の着信があった。




​──ボロボロでもいいから、可能な限り生きてくれ


遠い昔の記憶なのに、知世の声は、鮮明に焼き付いている。