「で、どうだったんよ? また例の如く引きこもって映画三昧か?」
GWが明けて、出社初日。
連休明けの倦怠感と戦いながら、何とか昼休みまで漕ぎつく。
俺は午前中の仕事の書類を整え、昼食の準備に取り掛かろうとしていると、隣りのデスクに座る同僚の米原 隼人が、椅子の背もたれに顎を乗せながらへらへらと嫌味ったらしくGWの成果を聞いてくる。
確かにコイツの言う通り、普段は部屋に閉じこもり映画ばかり見ている。
『趣味は映画鑑賞です』とでも言えば多少聞こえは良くなるかもしれないが、実のところ究極のインドア派というだけだ。
実際今年のGWもほとんど……、いや今年はある一点を除いて、だな。
「ふっ。今年の俺は一味違うぞ。なんせ飛び切りの美女から逆ナンされたんだからな!」
冒頭から侮ってかかってきた米原に対抗するため、俺は事実をやや脚色して話してみた。
「おぉ! マジか! 羽島にも遅めの春が来たってことか! おめでとう!」
俺の言葉を何ら疑いも持たずに受け止め、純粋に祝福してくる米原に対して一抹の罪悪感が生まれる。
バツが悪くなり、俺は真相を話すことにした。
「……まぁ、実はな。こういうことだよ」
俺が先日あった一連の出来事を順序立てて伝えていくと、米原の表情は次第に崩れていく。
そして遂には堪え切れず、俺を蔑むかのような、にやけ顔を惜しむことなく晒してくる。
「何だよっ! そういうことかよ! 要するにヘタクソなデート商法のネェチャンにハメられそうになったってことか! それはご愁傷様」
米原はヒィヒィ言いながら、嬉しそうにデスクを叩き爆笑する。
いや、さすがに笑い過ぎだろ……。
まぁ確かにネタにはなるけどな、この話。
米原は一通り満足するまで笑い倒すと、疑問を投げかけてくる。
「でもよ。その子、後で電話するって言ってたんだろ? 来たのか?」
「いーや。来てない。アンケートの時もだいぶ緊張してたみたいだし、電話なんて掛けられねぇんじゃねーのか?」
「かもな! でもよ、羽島。これだけは言っておくぞ?」
そう言うと米原は途端に真剣な表情となり、声を抑えながら話し出す。
「デート商法ってよ。商品さえ買わなけりゃ無料のキャバクラみてぇなモンで、結構楽しめるらしいぞ。ワンチャン、ヤれるかもよ」
米原はそう言って、下卑た笑みを浮かべる。
コイツは……。
相変わらず下品なヤツだ。
米原の言う通りデート商法は、モテなさそうな独身男性をターゲットにあたかも気のある素振りを見せて近づき、ジュエリーや不動産などの高価なものを買わせる、というのが一般的な認識だ。
彼女にしても、やたらと俺を持ち上げようとしていたので、確かにそう言った側面はあるのかもしれない。
だが、それは人によるだろう。
正直な話、俺が出会った彼女がそんな真似をやってのけるとは想像し難い。
「ねーよ! 万が一、手ェ出して輩みたいな兄ちゃんが出てきたらどうすんだよ! 向こうは、平気で人を陥れようとする集団だぞ」
「そりゃそうか! まぁなんか続報あったら聞かせてくれよ。面白そうだし」
そう言うと、米原はケラケラと笑いながらデスクを立ち、オフィスの一角にある喫煙ブースへ向かっていった。
全く。他人事だと思って、調子に乗りやがって。
しかし、米原に話したことで改めて疑問に思う。
あの度を超えた人見知りの彼女は、何故この仕事を選んだのか。
そう言えば、名前を聞いてなかったな。
GWが明けて、出社初日。
連休明けの倦怠感と戦いながら、何とか昼休みまで漕ぎつく。
俺は午前中の仕事の書類を整え、昼食の準備に取り掛かろうとしていると、隣りのデスクに座る同僚の米原 隼人が、椅子の背もたれに顎を乗せながらへらへらと嫌味ったらしくGWの成果を聞いてくる。
確かにコイツの言う通り、普段は部屋に閉じこもり映画ばかり見ている。
『趣味は映画鑑賞です』とでも言えば多少聞こえは良くなるかもしれないが、実のところ究極のインドア派というだけだ。
実際今年のGWもほとんど……、いや今年はある一点を除いて、だな。
「ふっ。今年の俺は一味違うぞ。なんせ飛び切りの美女から逆ナンされたんだからな!」
冒頭から侮ってかかってきた米原に対抗するため、俺は事実をやや脚色して話してみた。
「おぉ! マジか! 羽島にも遅めの春が来たってことか! おめでとう!」
俺の言葉を何ら疑いも持たずに受け止め、純粋に祝福してくる米原に対して一抹の罪悪感が生まれる。
バツが悪くなり、俺は真相を話すことにした。
「……まぁ、実はな。こういうことだよ」
俺が先日あった一連の出来事を順序立てて伝えていくと、米原の表情は次第に崩れていく。
そして遂には堪え切れず、俺を蔑むかのような、にやけ顔を惜しむことなく晒してくる。
「何だよっ! そういうことかよ! 要するにヘタクソなデート商法のネェチャンにハメられそうになったってことか! それはご愁傷様」
米原はヒィヒィ言いながら、嬉しそうにデスクを叩き爆笑する。
いや、さすがに笑い過ぎだろ……。
まぁ確かにネタにはなるけどな、この話。
米原は一通り満足するまで笑い倒すと、疑問を投げかけてくる。
「でもよ。その子、後で電話するって言ってたんだろ? 来たのか?」
「いーや。来てない。アンケートの時もだいぶ緊張してたみたいだし、電話なんて掛けられねぇんじゃねーのか?」
「かもな! でもよ、羽島。これだけは言っておくぞ?」
そう言うと米原は途端に真剣な表情となり、声を抑えながら話し出す。
「デート商法ってよ。商品さえ買わなけりゃ無料のキャバクラみてぇなモンで、結構楽しめるらしいぞ。ワンチャン、ヤれるかもよ」
米原はそう言って、下卑た笑みを浮かべる。
コイツは……。
相変わらず下品なヤツだ。
米原の言う通りデート商法は、モテなさそうな独身男性をターゲットにあたかも気のある素振りを見せて近づき、ジュエリーや不動産などの高価なものを買わせる、というのが一般的な認識だ。
彼女にしても、やたらと俺を持ち上げようとしていたので、確かにそう言った側面はあるのかもしれない。
だが、それは人によるだろう。
正直な話、俺が出会った彼女がそんな真似をやってのけるとは想像し難い。
「ねーよ! 万が一、手ェ出して輩みたいな兄ちゃんが出てきたらどうすんだよ! 向こうは、平気で人を陥れようとする集団だぞ」
「そりゃそうか! まぁなんか続報あったら聞かせてくれよ。面白そうだし」
そう言うと、米原はケラケラと笑いながらデスクを立ち、オフィスの一角にある喫煙ブースへ向かっていった。
全く。他人事だと思って、調子に乗りやがって。
しかし、米原に話したことで改めて疑問に思う。
あの度を超えた人見知りの彼女は、何故この仕事を選んだのか。
そう言えば、名前を聞いてなかったな。