ーーー 渡瀬神社を抱く紅蓮山(ぐれんやま)には、こんな怪談がある。 山道を一人歩いていた若い娘が、見知らぬ男に出会った。 男は娘の道中をただ送るだけ。娘は次第に男に惹かれ、二人は良い仲になる。 しかし男の正体は、恐ろしい山犬の妖怪だった。 正体を知られた山犬は、娘を山の奥深くへと連れ去ってしまった。 山犬も、娘の行方も、その後二度と分からなかった。 〈了〉