参拝を終え、私達はしばらく境内の中を見て回った。
半年前は初詣でそれなりに人も多かったけど、今日は幸い誰もいない。建物の形も、趣きも、何もかも半年前の知っている状態のまま。
今や故郷も実家もない私にとって、この場所だけが馴染みある第二の家のように落ち着けた。
けれどもうそろそろ屋敷へ向かわないと。
空が完全に真っ暗になったら、山の中を歩けなくなってしまうから。
そばを付いて歩いていた九郎は、そんな私の心中を察したのか、声を掛けてくる。
「フヨさん、そろそろ帰りましょうか。
僕が屋敷までお送りします。」
任せてください、と胸を張る。大きい大人なのに、その姿はなんだか少し子ども染みていておかしかった。
「…うん、ありがとう。」
そんな見知らぬ男にお礼を言ってしまう私も、大概おかしいのかも。
石段を下り、鳥居でまたお辞儀をし、私達は再び深い森の中へ入っていく。