だから試しに付き合っているんだと思っていた。ただ、そこにいたから。名前が似ていたから。
 でもそんなのは嘘だった。
 こんなに、哉斗は見てくれていたんだ。
 気づいて、気づかれて。
 誰かが、見てくれている幸せを教えてくれた。
「それでもやっぱ、ちゃんと言いたい。……言って、ちゃんと夏菜の彼氏になりたい」
 哉斗は姿勢を正した。
 息を吸って、哉斗は言った。
「夏菜。俺と、付き合ってくれませんか」
 膝に、水滴が落ちた。
 アイスのカップについた水滴か、涙かは分からない。
 でも涙だったとしても、これは多分嬉し涙だ。

 自分では選ばない味のアイスに、雨の降らない夏の空。
 高校生最初の夏、私たちは恋をする。
 退屈な夏休みはもう、怖くはなかった。