「風光明媚、って感じだね」
「……そうですね」
そこは、山間にある小さな村だった。
山肌の低い位置には所々に瓦屋根の家が見えるけれど、数はあまり多くない。
家同士の距離もかなり開いているところが多く、その間にはそれぞれの家のものだろうビニールハウスや畑があった。
「湖はどこにあるんですか?」
「もう少しあっちかな。村はずれの林の中にあるって聞いた」
言いながら、先輩はアクセルを踏んだ。
車1台がやっと通れる幅の道を山の方へと進み、木が鬱蒼と生い茂る林の傍で止まる。
上着を着て車から降り、先輩に続いて林の中へ入っていった。
舗装なんてされていない、下草が踏み固められただけの道。数分歩くと視界が開けて、風で揺らめく水面が見えた。
向こう岸まで10メートルくらいはありそうな、思ったより大きい湖だ。
「あ、教授たちもう来てる」
湖畔には、既に何人かが集まって湖底調査の準備を整えている。
私たちもそこに加わり、諸々の説明を受けた後に作業を始めた。