「……はい。待ってます」
すぐとか言っちゃったけど、かなり厚みあるなこの本!?
ずしっとした感触を手に、コンビニ前に乱雑に並んでいるテーブル席に座る。他にも買い物の休憩のために座っている人がいて、思い思いに過ごしていた。こういう光景もイベントならではだよなと嬉しくなりながら、本を開いた。
読み始めから、まるで自分の作風に似せたかのような作品だった。違う。長年書いてきたからこそ分かる。みいらさんは、本当は私と同じような作品を書くのを好んでいた人だったのだ。原作に寄り添った描かれた二人の関係性。そこから構築されていく、恋愛と呼ぶにはいささか重い感情をぶつけ合う二人。臨場感のある描写の中に光る言葉のやり取りに何度も胸を揺さぶられた。
みいらさんは、交流だけではない。本当はこれだけのものを書ける実力があったのだ。では何故、それを隠した作品を書いていたのだろう。
「藤乃先生が真っ青になっちゃうところ、見たかったのにな。もうクライマックスまで読んじゃいましたよね、時間的に」
ぎょっとして顔を上げれば、みいらさんがプリーツスカートを翻して微笑んだ。
「だって、『すぐ』読めると思ったんでしょ?いつもみたいに適当に読み流してもいけると思ったんでしょ?分かってましたよ、藤乃先生が私の小説、面白くないと思ってたの」
「じゃあ、なんで」
声が震える。全く威圧感のない彼女から、見えない気迫がぶわりと広がった。
「藤乃先生、この世界はね。まじめ~に書いてるやつなんて報われないんです。みんなと仲良くして、それっぽくいちゃついてるもの書いてればいいんです。なんでは私の台詞。なんで藤乃先生は、私よりもいいねが稼げない、クソ堅苦しいもの書き続けるんですか?」
言葉を失う。何もかも分かっていて、私を慕っているふりをしていただけなのだ、みいらさんは。淡々と話すみいらさんの笑顔は、まるで笑っていない。
「じゃあ……また『なんで』を返しますけど。今回あなたは私と似たものを書いた。クソ堅苦しくて人が寄り付かない、まどろっこしい話を。好きでもなければ書けないような作風ですよ、こんなの」
そうだ、好きで小説を書かなければ。こういうストーリーを練ろうとは思えないだろう。それこそ、交流目的の人なら、尚のこと。
すぐとか言っちゃったけど、かなり厚みあるなこの本!?
ずしっとした感触を手に、コンビニ前に乱雑に並んでいるテーブル席に座る。他にも買い物の休憩のために座っている人がいて、思い思いに過ごしていた。こういう光景もイベントならではだよなと嬉しくなりながら、本を開いた。
読み始めから、まるで自分の作風に似せたかのような作品だった。違う。長年書いてきたからこそ分かる。みいらさんは、本当は私と同じような作品を書くのを好んでいた人だったのだ。原作に寄り添った描かれた二人の関係性。そこから構築されていく、恋愛と呼ぶにはいささか重い感情をぶつけ合う二人。臨場感のある描写の中に光る言葉のやり取りに何度も胸を揺さぶられた。
みいらさんは、交流だけではない。本当はこれだけのものを書ける実力があったのだ。では何故、それを隠した作品を書いていたのだろう。
「藤乃先生が真っ青になっちゃうところ、見たかったのにな。もうクライマックスまで読んじゃいましたよね、時間的に」
ぎょっとして顔を上げれば、みいらさんがプリーツスカートを翻して微笑んだ。
「だって、『すぐ』読めると思ったんでしょ?いつもみたいに適当に読み流してもいけると思ったんでしょ?分かってましたよ、藤乃先生が私の小説、面白くないと思ってたの」
「じゃあ、なんで」
声が震える。全く威圧感のない彼女から、見えない気迫がぶわりと広がった。
「藤乃先生、この世界はね。まじめ~に書いてるやつなんて報われないんです。みんなと仲良くして、それっぽくいちゃついてるもの書いてればいいんです。なんでは私の台詞。なんで藤乃先生は、私よりもいいねが稼げない、クソ堅苦しいもの書き続けるんですか?」
言葉を失う。何もかも分かっていて、私を慕っているふりをしていただけなのだ、みいらさんは。淡々と話すみいらさんの笑顔は、まるで笑っていない。
「じゃあ……また『なんで』を返しますけど。今回あなたは私と似たものを書いた。クソ堅苦しくて人が寄り付かない、まどろっこしい話を。好きでもなければ書けないような作風ですよ、こんなの」
そうだ、好きで小説を書かなければ。こういうストーリーを練ろうとは思えないだろう。それこそ、交流目的の人なら、尚のこと。