「あー、うぜぇ、ガチで殴りたくなってきた」
「そんなことを繰り返してたら、あなたには絶対最後何も残らない! 何もない人生だったなって嘆きながら人生終えればいい!」
「うるせぇよ……」
木下が拳をゆっくり振りかざした途端、ドクンと心臓が大きく跳ねて、一瞬呼吸が止まった。
私はその場に倒れ込んで、心臓付近を強く抑える。
「あっ、くっ……」
ああ、最悪だ。お父さんとおばあちゃんと先生と、ちゃんと約束したのにな。無理は絶対しないって。
呼吸が浅くなってきて、目の前の景色が霞む。
木下は、苦しむ私の様子を見て「おい逃げるぞ」とだけ言って、私を置いて去っていった。
人ごみに紛れそうになったけれど、ちょうどそばにあったゴミ箱に近づいてきた女性が、私の存在に気づいてくれた。
「きゃー! どうしたんですか、大丈夫ですか!」
大声が響いて、あたりはざわつきだす。
ああ、どうしよう、私ここで、終わるのかな。鈍器で殴られているように、心臓が痛い。
閉ざされかけた景色を茫然と眺めていると、「青花!」と私を呼ぶ声が、ひときわ大きく聞こえてきた。
ああ、禄だ。彼の声だ。
安心したその瞬間、私は意識を手放した。
〇
誰かのためにこんなに怒ったり悔しくなったりすることが、今まであったかな。
病気が分かるまで、私は何でもそつなくこなしてきたと思う。
成績も運動もそこそこで、明るい友達もいて、感情が爆発することなんてなかった。
正義感はある方だとは思うけど、きっと見過ごしてきた悪もあった。もっと器用に生きていたはず。
だけど、禄と出会ってから、そうじゃいられなくなった。
私は、生きている限り、絶対に大切な人を傷つけたくない。見過ごしたくない。
綺麗ごとばかり並べられる世界じゃないってこと、頭では分かってるはずなのに。
春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来ても、禄と一緒にいる未来が欲しい。
「青花……!」
突然パチッと目が覚めると、顔面蒼白となった禄が視界に広がった。
禄はすぐに「先生、鶴咲さんが目を覚ましました」と慌ただしく告げて、ベッドから離れる。
カーテンの隙間から見慣れた校庭が見えて、ここは保健室なのだと理解した。
「鶴咲さん。今、救急車すぐに来るからね。体勢はつらくない?」
カーテンが開いて、保健室の先生が入って来た。そして、私を安心させるように問いかける。
私はふるふると首を横に振って「もう大丈夫です」と答えたけれど、先生とそのうしろにいる禄は心配そうな顔をしている。
「十分後には救急車が到着するらしいから、もう少し待っていて。私は校門まで救急隊の人を迎えにいってくるから、その間神代君よろしくね」
「はい、分かりました」
会話を聞きながら、私は少しずつ意識をしっかりさせようと、指先に力を入れたり、深呼吸をしたりする。
静かな保健室に二人きりになって、私は改めて禄の顔を見つめた。
「驚いた……。女性の叫び声が聞こえて、近寄ったら青花が倒れてた」
消えてしまいそうなほど、弱々しい声。ものすごく心配をかけてしまったことに、罪悪感を抱く。
「怖かった、すごく……。ごめん、ずっと、そばにいる約束だったのに」
「禄のせいじゃないよ」
そう言いきると、禄は「でも」と首を横に振る。私は何て声をかけたらいいのか考えて、ひとまず倒れてしまった経緯を説明しようとした。
「ごめんね、人ごみにいすぎて疲れてたみたい。私がはしゃぎすぎたんだ」
木下たちのことは、伝えない。
もし禄がこのことを知ったら、今度は禄が無茶をしてしまうと思うから。
どうにか禄が自分を責めすぎないようにしたいけれど、上手く言葉が見つからない。
「怖かった……、もう二度と青花が目を覚まさなかったらどうしようって」
禄が、私を切なげに見つめながらぽつりとつぶやく。
長い前髪のせいではっきり見えないけれど、彼の瞳は少し濡れている気がする。
こんなにも私がいなくなることを恐れてくれる人が、いるんだ。不謹慎にも、そんなことで心臓が少し高鳴った。
「ごめん、青花の方が、怖かったよね」
「ううん、禄がすぐに来てくれたから……」
安心させるように笑おうとしたけれど、なぜか頬が濡れていることに気づいた。
不思議に思い中指を肌に滑らせると、それは目から流れていた。
痛くて泣いたのか、怖くて泣いたのか、不安で泣いたのか。
分からないけれど、自分が泣いていると分かった途端、ポロポロと涙の粒があふれ出てくる。
「おかしいな、ごめん……」
禄は何も言わずにそんな私を見守ってくれて、そばにティッシュを置いてくれた。
自分が生きていると分かって出てきた涙。これは紛れもなく、死への恐怖だった。
木下たちの前では気を張っていられたのに、禄の前では自分を守る鎧がボロボロ崩れ落ちてしまう。
「禄、私、怖かった、怖かったよ……」
私は、布団を自分の顔に押しつけて、声を絞り出す。
ずっと誰にも言ったことのない弱音が、どんどんこぼれてくる。
「私ね、ほんとは病気より、私が寝ている間に世界が変わってることが怖いの。私が目を覚まさない間も、クラスメイトには毎日いろんなことが起こって、おばあちゃんも体が弱っていって、世界ではありえない事件が起きて、大規模な感染症が流行って、禄に新しい友人ができて……って。私が眠ってる間に通り過ぎた〝今〟に……、世界に置き去りにされて、いつかひとりぼっちになっちゃうんじゃないかって」
胸の中に押し込めていた恐怖や不安が、一気にあふれ出していく。
こんな感情、自分の中に本当にあったんだって、自分でも驚くほどに。
「本当は私、大切な人がいる今の世界を生きたい。大切な人が誰もいない未来の世界に残されたって、意味ないなって思うんだよ……っ」
「青花……」
「私が目を覚ましたときに、おばあちゃんやお父さんや禄が死んでしまっていたら、そんな世界、生きてたって意味がないっ……」
――誰にも言えなかった。
言ったらダメだと思っていた。
だってそれは、生きることを否定することに繋がるから。
こんな言葉をおばあちゃんが聞いたら、きっと悲しむ。
こんな本音をお父さんが知ってしまったら、きっと怒る。
私は今、生きているのではなく、生かされているのだから。
だから、どこにも弱音を吐けなかった。吐ける訳がなかった。
耳を澄ますと、未来ある同世代の人たちの、楽しげな声が聞こえてくる。カーテンの隙間から見えた空は目が眩むほど青く澄んでいて、世界は美しいことを知らせてくる。
それなのに、私はもう明日、強制的に季節をまたがなければならない。
次に目を開いたときには、文化祭の思い出を語る人なんてきっとどこにもいなくて、すっかり受験の空気になって教室はピリピリしているんだろう。黄金色の景色は色を失って、寒色の世界に変わっている。
禄も、重たそうなコートを羽織って、単語帳を見つめながら、見えない未来への不安を募らせて、白い息を空に向けて吐いたりするんだろう。
木下たちは、すっかり今日のことなんか忘れて生きているはず。
私がいてもいなくても、何もなかったみたいに、世界は回っていく。
……微かに、救急車の音が聞こえる。
あの車に乗せられたら、もしかしたら私は、もうこんな風に学校に通うことはできなくなるかもしれない。悲鳴を上げている心臓が、そんな悪い予感まで知らせてくる。
禄、私は君に、本当に覚えていてもらえるのかな。禄がどんなに大人になっても。
「青花、ひとつ約束してほしいことがある」
布団の中で声を押し殺して泣いていると、突然空を切り裂くように、禄が声を発した。
ずっと、私の啜り泣く声だけが聞こえていた保健室だったのに。
驚いて少しだけ布団から顔を出すと、禄はもう瞳を揺らしたりせずに、真剣な顔をして私をまっすぐ見つめていた。
「万が一俺が死にそうになったとき、もし青花がまだ寝ていたら、ガラス叩き割ってでも起こす。青花の世界が勝手に変わる前に、青花の目を覚ますって約束するよ。いい?」
「はは、何、それ……」
「本気で言ってるよ」
なんて無茶な言い分。でも嬉しい。
「そんなことをしたら、禄は捕まっちゃう。コールドスリープ中の患者を起こすことは、法に反することだから……」
「捕まったっていいよ」
一週間しか目を覚ましていられない私を、禄は連れ出してくれると言ってくれたんだろうか。
こんな会話、守倉先生に聞かれたらものすごく怒られちゃうよ。
頭がいいはずなのに、禄はめちゃくちゃだな……。
「本当に、世界が変わる前に、起こしてくれる……?」
かすれた声が、保健室に響く。
私の問いかけに、禄がこくんと頷く。
「……くだよっ……」
一回目では声にならなくて、私はもう一度伝える。
「約束だよ、禄っ……」
涙声で伝えると、禄は再び「うん」と力強く頷いて、それから、私の涙を指で拭ってくれた。
禄に初めて触れられて、これ以上無理をしたらダメなのに心臓がドキッとした。
約束だよ、禄。
私の世界が変わりそうなときは、置き去りにされそうなときは、きっと私を起こしに来て。
「鶴咲青花さん、中に入りますよ」
半開きだったカーテンが開いて、救急隊員の人が二人入って来た。
禄はスッとうしろに下がり、運ばれていく私を心配そうに見守っている。
ほんの少しだけ目を細めて、私は力なく手を振った。
そうして私は、冬まで再び眠りについたのだった。
過ぎ去った季節
『師走さんて私生活謎ですけど、普段は何してるんですかー?』
『今はそうですね、ゲームを作ったりとかしてます……』
『えっ、ゲームのプログラミングもできるってことですか? いつか師走さんのゲーム、ぜひやらせてくださいよ!』
ガンクロさんとのコラボ配信は、思ったよりもスピード感のあるスケジュールで依頼が来て、夢のように時は過ぎた。
【陽キャガンクロさんと陰キャ師走さんのコラボ草】
【師走緊張してて可愛いww】
【またコラボやってほしい!】
編集時にログを見て改めて実感したけれど、コメント欄もいつになく盛り上がっていた。
ガンクロさんの話術とエイム力――ゲーム内で敵を狙う力の高さには改めて圧倒される。
雑談交じりのライブ配信は二時間にもわたり、俺の中で過去一の視聴者数になった。
「青花にも観てほしいな……」
動画編集中のパソコン画面を見ながら、俺はひとりつぶやく。
倒れている青花を見たときは、夢か現実かがが分からなくなった。
信じたくない光景を目の前にして思考が停止してたけれど、体だけは青花の元へ動いてた。
人々の視線を感じながら、青花をすぐに背負って保健室へと向かい、先生に状況を説明する。冷静に対処したつもりだったけど、本当は不安で押し潰されそうだった。
『約束だよ、禄っ……』
あのときの青花を思い出すと、胸が張り裂けそうになる。
自分でも無茶なことを言っていると分かっていたけれど、それくらいしか青花にしてあげられることが思い浮かばなかった。
本当は病院まで付き添いたかったけれど、ただ邪魔をするだけだと思い、おばあさんからの連絡を待った。
青花は無事安静状態に戻り、予定通りコールドスリープに入ったと電話で連絡が来たときは、心から安堵した。
そうして、青花が眠りについて、三週間が経った。
そう、まだたった、三週間。
「禄ー、俊也ー、ご飯できたわよ」
階下から母親の声が聞こえて、俺はヘッドホンを外して返事をする。
今日は塾が休みの日なのか、弟もいるようだ。俊也はすぐに部屋から出ると、俺と階段で鉢合わせないように素早く一階へと駆け下りていった。
「こうして集まって食べるの久々ね」
過剰な量の揚げ物を運びながら、母親はご機嫌な様子で俺の隣の席に着く。
母親は、俺と話したあの一件以来、俊也との距離を何とか上手く縮めようとしている。
斜め前に座る俊也はいつもと変わりない様子だけど、私立受験が突然許されたことには少し動揺していたらしい。
父親は今日も遅いらしく帰ってきていない。
目の前に運ばれたお惣菜の揚げ物を、俺は黙々と口に運んだ。
「俊也もたまにはリフレッシュして、息抜きしないとね」
母親の言葉に、俊也は「そんな呑気なこと言ってられるかよ」と返す。
そして、ソースも何もつけずに、ただお腹にため込むみたいにおかずだけ食べて、俊也は席を立とうとした。
それを見た母親は、「待って俊也」と呼び止める。
「何だよ、宿題終わってなくて忙しいんだけど」
「私、俊也に謝らなきゃいけないことがあるの」
「はあ……?」
俊也は訝しげに眉を顰めて、母親をほとんど睨みつけるみたいに見ている。
嫌な空気を察したけれど、母親は言いづらそうに言葉を続ける。
「もし俊也に、禄を贔屓してるなんて思わせていたら、ごめんね」
俺はどんな表情をしていたらいいのか分からず、ただ味のしない食事を咀嚼する。
俊也はしばらく沈黙してから、フッと鼻で笑った。
「何、今さら。あんたの長男贔屓なんて、もうどうでもいいんだけど」
「違うの、お母さん、ずっと俊也は大丈夫って逆に甘えてたの……」
「何を許されたくて謝ってんの? 誰かに何か言われた?」
俊也の問いに、母親は反射的にチラッと俺の方を見た。
すると、何かを察した俊也は目の色を変えて、急にお惣菜がのったお皿を床に投げつけた。
ガシャーン!と大きな音が家に響いて、茶色い個体が床に散らばる。
「また禄が言ったから? あんたいつも禄に言われたことしか受け止めないな。俺があのとき、何を言っても荒れてた癖に……っ」
俊也が言う〝あのとき〟とは、間違いなく俺がM学園を受けるのをやめると突然宣言したときのことだ。
母親は怒り狂って、『あんたのためにいくら学費使ってきたと思ってんのよ!』と叫んでいた。
俊也はそんな母親を宥めようとして、説得を試みてくれた。俺はもう全部どうでもよくて自室に逃げていたから、俊也がどんな言葉を母親にかけてくれていたのかは、分からないけれど。
本当は、木下に俊也をいじめると脅されたから受験をやめた。
それは事実だったけど、俺はただの弟思いの人間ではない。
なんで俺が弟のせいで進路を変えなきゃならないのかという不満が、目の前にある面倒なことから全部逃げてもいいという理由になっていた。
そうやってずっと、自分を正当化して生きていた。
最初から何も生きる目標なんか、なかった癖に。
「兄貴はいつも面倒なことから逃げるクソで、専業主婦の母親はヒステリックな学歴主義者で、父親は子供のことには何も関与してこないただの空気……、誰も人の気持ちを考えてない。自分のことしか考えてない、本当にゴミみたいな家族だよ!」
「俊也……!」
暴言を吐いて暴れだす俊也を、俺はうしろから羽交い絞めにして止めたが、俊也は手当たり次第周りにある雑誌や時計を床に投げつけていく。
そして、俊也は母親を見下ろしながら言葉の暴力を続けた。
「俺がM学園行きたい理由が分かるか⁉ あんたら全員見下すためだよ! 高学歴になって、いいとこ就職して家族のことなんか全部忘れるためだよ! 俺はずっと、クソみたいな〝今〟を忘れるために生きてんだよ‼ 罪悪感消すために、自分のために唐突に謝罪してきやがって……、そんなんで簡単に許してたまるかよ‼」
俊也の言葉が、剣みたいに尖って、胸に突き刺さる。
今を忘れるために生きているだなんて、そんな言葉を、家族に言わせている。
向き合ってこなかったこと全てが、今目の前にある。
母親は放心状態のまま固まっていて、何も言葉が出てこない様子だ。
興奮しきった様子の俊也は、腕を振り払って俺から離れ、こっちを睨みつけてくる。
「何か不満があるなら言えよ。いつもそうやって傍観してるだけでさ……」
完全に、敵を見るような瞳で、俊也はそう言い捨てた。
俺は割れたお皿の破片を拾って、そっと言葉を返す。
「何もない。全部お前の言う通りだから」
きっぱりと伝えると、俊也は呆れたように笑う。
いつもなら、もうこのまま、自室に戻って何もなかったことにしているだろう。
カンニングを疑われ、友達も失ったあの事件をきっかけに、自分に価値がないことを思い知って、諦め癖がついていたから。
でも、そうじゃない。それじゃ、ダメなんだ。
『本当は私、大切な人がいる〝今〟の世界を生きたい』
ボロボロと泣いている青花が、瞼の裏に浮かんでくる。
大切なことから逃げ続けていたら、望んだ未来なんて永遠にやってこない。
〝いつか〟を変えたいと心で思っているのなら、〝今〟動くしかないんだ。
「ほかに何か言いたいことがあるなら、何でも全部聞くよ」
「は……?」
予想外の言葉だったのだろうか、俊也は明らかに眉を顰めている。
皿の破片を全部拾い集めた俺は、すっと立ち上がって、俊也のことをまっすぐ見つめた。
「俺は、俊也に何を言われても、全部許せる」
「何だよ、それ……」
「俺とお前は、家族だから」
そう言いきると、俊也は一瞬だけ眉をピクッと動かした。
どんな言葉なら届くのか、正直分からない。俺たち家族は、この割れたお皿のように、もう元には戻れないのかもしれない。
割れた事実は消せない。だけど、ただ違う形になっただけだと……そう思える日が来るかもしれない。
「血が繋がってるから許すとかじゃない。俺がお前を家族だと思ってるから、全部許せる」
「許すのは俺の方だろ、頭おかしいのかよ……」
「じゃあなんでそんなに、罪悪感に満ちた顔してんだよ」
指摘すると、俊也は小さく動揺した声を漏らした。それからうつむいて、荒らされた床をぼうっと見つめる。
俺は語りかけるでも、ひとり言を言うでもなく、ただ、自分の気持ちに素直になることだけに集中した。
「いろんな問題を見過ごしてきたから……、取り返しのつかないこともあると思う。でも、もう少しマシな家族になれるよう、これからは俺も一緒に頑張りたい」
「今さら……遅すぎんだろ」
うつむきながら嘆く俊也に、俺は苦笑交じりに言葉を返した。割れたお皿の破片を、どうにか床の上で繋げながら。
「俊也。きっとそんなすぐには、人生終わらないよ。よくも悪くも」
何があるか分からないけれど、どんな不幸があろうとなかろうと、人生は今を積み重ねながら続いていく。
上手くいったり、いかなかったりを繰り返しながら。
きっと俺たち家族は、劇的に改善することはないだろう。
俺も俊也も、いつかこの家を出ていく。放っといても離れ離れになる。
それまで耐えていたら見過ごせていた問題だったかもしれない。
だけど、俺は今、俊也がここで爆発してくれてよかったと感じている。
とっくに壊れてるなら壊れてるで、それを知った上で、生きていく術がきっとあると思うから。
「俊也、あなたの学費は、禄が援助してくれるのよ……」