目を覚まして


 自分の心臓が、指定難病のひとつである病に冒されていることを知ったのは、ちょうど高校受験が終わった二月の終わり頃。
 超放任主義の癖に勉強だけはちゃんとしろとうるさい歯科医師のお父さんのために、そこそこいい偏差値の学校に受かったはずだった。
 ときおり自分の心臓が捻り潰されるような痛みがあり、だんだんとその感覚が迫ってきたので、受験が終わったあとにおばあちゃんに打ち明けて病院に連れていってもらったのだ。
 最初はかかりつけの内科だったけれど、何度通っても一向に良くならず、大学病院へ回され、何度も検査してようやくそれが不治の病であることが分かった。
 結果が分かった次の日に私は高校生になる予定だったけれど、無念にも入学式前に休学となったのだ。
 病気を知ったおばあちゃんは何度も励ましてくれたけれど、深夜にいつも泣いているのを知っていた。お父さんはいつも通り冷静な反応で、でもやっぱり少し動揺していたようにも見える。母親は私が三歳のときに同じように病気で亡くなっているので、二人は二倍つらかったかもしれない。
 私に残された選択は、このまま治療薬の開発を待ちながら生きるか、治療薬ができるまでコールドスリープするか、の二択だった。
「コールドスリープって……、たしか最長七十年間眠り続ける処置だよね。目を覚ましたときに、私の知り合い皆死んでるかもしれないんでしょ? 七十年後の世界にひとりで生きていくなんて、想像しただけで恐ろしいんだけど」
 病院で説明を受けた日から、毎日毎日家族会議。
 私の言い分に、おばあちゃんはつらそうな顔をし、お父さんは険しい表情を見せる。
「そんな世界で生きてたって、意味ないじゃん。私……、いきなり未来に飛ばされるようなもんじゃん!」
「青花。担当医は私も信頼を置いている方だ。進行を食い止めて治療法が見つかるのを待つことが最善だ」
「まだ実例だって少ないのに。お父さん、そのお医者さんに実績つくるの頼まれたんでしょう!」
「いい加減にしなさい!」
 突然大きな声を出され、私はビクッと肩を震わせる。
 白髪交じりの髪の毛をしっかりオールバックでまとめている、いかにもお医者様な雰囲気のお父さんがこうやってすごむと、一瞬にして緊張感が張り詰める。