『リキャストが終了しました』
「……むおっ!?」
ポーション屋を出て、店主に教えてもらった冒険者ギルドへと向かっていたとき、ふと耳元で妙な声がした。
いきなり耳元で囁かれた!?と思った俺は、身構えて周囲を見回したが近くには通行人しかいない。いきなり立ち止まって妙な声を上げてしまったもんだから、胡乱な目を向けられる始末。は、恥ずかしい。
「……ああ、リキャストタイムが終わったのか」
この半月の間、毎日のように経験しているのだけれど、突然耳元で囁かれるのでいつもびっくりしてしまう。
俺は親指と人差し指で空中を2回摘む動作をする。
すると、目の前に半透明の板のようなものが現れた。
これがこの世界で普通のことなのかはわからないけれど、こうすることで俺が習得しているスキルが書かれたウインドウを呼び出すことができるのだ。
俺は改めて「廃品回収」スキルを確認する。
スキル:廃品回収
効果:捨てられた(※)アイテムを回収できる。
リキャストタイム:0分/12時間
俺が廃品回収の能力について自覚しているのは、このゲームのウインドウ画面のようなもので知ることができたからだ。
リキャストタイムというのは、次にスキルを発動できるまでの待ち時間みたいなものだ。これが「0分/12時間」になればまたスキルが使える。
「……というか、リキャストが12時間って長すぎだよな」
ついぼやいてしまった。
1回ケンイチのスキルを見せてもらったことがあるけれど、彼のチートみたいなスキルでもリキャストタイムは30秒足らずだった。
それを考えると12時間というのは桁違いに長い。長すぎる。何でこんなゴミスキルを再発動させるのに12時間もかかるんだ。
あの姿なき声の野郎、設定間違ってないか?
俺はウインドウの「捨てられた」のあとにある「※」マークに触れる。
捨てられたの定義:他者の持ち物が地上に放置された状態で、所有者が所有権を放棄している場合。忘却したり、意思にかかわらず所有権を放棄する言葉を口にした場合も該当する。
……うん、何度読んでもいまいちわからん。
つまり、残飯を回収したのは「捨てたことで所有権が放棄されたから」で、果物を回収したのは「木から落ちて果物の所有権が放棄されたとみなされたから」なのだろうか。
壊れた装備も不要になって捨てたから放棄されたとみなされた。
とするなら、さっき売ったポーションはどういうことだろう。銀貨数枚で売れるものを捨てるわけがないし、死者の所有物だったとかだろうか。
魔物との戦いで命を落とした人間が持っていたものを俺が回収している。ありえない話ではない。何ていうか、それこそまさに廃品回収だ。
俺も廃品回収会社で亡くなった人の自宅からゴミを回収する仕事をやったことがある。遺品は遺族に渡すが、必要のない家電等はリサイクルショップに持ち込んだりもする。あれと同じといえば同じか。
「……ま、とりあえず今日も回収しとくか」
回復ポーションでも回収できれば、銀貨数枚で売れるしな。
大通りでスキルを使うのは何だか人の目が気になったので、ちょっと路地に入ることにした。
周りに人がいないことを確認して、空中から何かを掴むように右手を出し、頭の中でスキル発動と念じる。
すぐに俺の右手がぼうっと青白く光り出した。
そして、手のひらに何か硬いものの感触が生まれ──。
「……何だこりゃ」
俺の右手に収まっていたのは、回復ポーションでも果物でもなく──妙な形をしたナイフだった。
全体的に黒ずんでボコボコとしていて、先端部分だけがほのかに赤い。凸凹しているのは装飾かと思いきや、血管のような形をしていて何だかキモい。
変なアイテムを回収しちまったな。とりあえずこのキモいナイフの正体を確認するために、情報をチェックしてみるか。
再び指を摘む動作をして、ステータス画面を開く。
魔剣オソロ
レベル:1
攻撃力:100
スキルスロット1:なし
契約者:ギーゼラ
ギーゼラ? 誰だそれ?
今まで何度かアイテムや装備の情報をこうやってチェックしたことがあるけれど、「契約者」なんて項目は見たことがない。
というか──。
「ま、魔剣?」
魔剣って、アレだよな。ゲームとか映画で出てくる、何かしらの魔法がかかった、メチャクチャ強力な武器。
そう言われると、何だか魔剣っぽい形をしている。
妙な高揚感に、思わず鳥肌が立ってしまった。
これはもしかすると、もしかするのかもしれない。
え? 何? ここにきて、とんでもないものを回収しちゃった感じですか?
「……むおっ!?」
ポーション屋を出て、店主に教えてもらった冒険者ギルドへと向かっていたとき、ふと耳元で妙な声がした。
いきなり耳元で囁かれた!?と思った俺は、身構えて周囲を見回したが近くには通行人しかいない。いきなり立ち止まって妙な声を上げてしまったもんだから、胡乱な目を向けられる始末。は、恥ずかしい。
「……ああ、リキャストタイムが終わったのか」
この半月の間、毎日のように経験しているのだけれど、突然耳元で囁かれるのでいつもびっくりしてしまう。
俺は親指と人差し指で空中を2回摘む動作をする。
すると、目の前に半透明の板のようなものが現れた。
これがこの世界で普通のことなのかはわからないけれど、こうすることで俺が習得しているスキルが書かれたウインドウを呼び出すことができるのだ。
俺は改めて「廃品回収」スキルを確認する。
スキル:廃品回収
効果:捨てられた(※)アイテムを回収できる。
リキャストタイム:0分/12時間
俺が廃品回収の能力について自覚しているのは、このゲームのウインドウ画面のようなもので知ることができたからだ。
リキャストタイムというのは、次にスキルを発動できるまでの待ち時間みたいなものだ。これが「0分/12時間」になればまたスキルが使える。
「……というか、リキャストが12時間って長すぎだよな」
ついぼやいてしまった。
1回ケンイチのスキルを見せてもらったことがあるけれど、彼のチートみたいなスキルでもリキャストタイムは30秒足らずだった。
それを考えると12時間というのは桁違いに長い。長すぎる。何でこんなゴミスキルを再発動させるのに12時間もかかるんだ。
あの姿なき声の野郎、設定間違ってないか?
俺はウインドウの「捨てられた」のあとにある「※」マークに触れる。
捨てられたの定義:他者の持ち物が地上に放置された状態で、所有者が所有権を放棄している場合。忘却したり、意思にかかわらず所有権を放棄する言葉を口にした場合も該当する。
……うん、何度読んでもいまいちわからん。
つまり、残飯を回収したのは「捨てたことで所有権が放棄されたから」で、果物を回収したのは「木から落ちて果物の所有権が放棄されたとみなされたから」なのだろうか。
壊れた装備も不要になって捨てたから放棄されたとみなされた。
とするなら、さっき売ったポーションはどういうことだろう。銀貨数枚で売れるものを捨てるわけがないし、死者の所有物だったとかだろうか。
魔物との戦いで命を落とした人間が持っていたものを俺が回収している。ありえない話ではない。何ていうか、それこそまさに廃品回収だ。
俺も廃品回収会社で亡くなった人の自宅からゴミを回収する仕事をやったことがある。遺品は遺族に渡すが、必要のない家電等はリサイクルショップに持ち込んだりもする。あれと同じといえば同じか。
「……ま、とりあえず今日も回収しとくか」
回復ポーションでも回収できれば、銀貨数枚で売れるしな。
大通りでスキルを使うのは何だか人の目が気になったので、ちょっと路地に入ることにした。
周りに人がいないことを確認して、空中から何かを掴むように右手を出し、頭の中でスキル発動と念じる。
すぐに俺の右手がぼうっと青白く光り出した。
そして、手のひらに何か硬いものの感触が生まれ──。
「……何だこりゃ」
俺の右手に収まっていたのは、回復ポーションでも果物でもなく──妙な形をしたナイフだった。
全体的に黒ずんでボコボコとしていて、先端部分だけがほのかに赤い。凸凹しているのは装飾かと思いきや、血管のような形をしていて何だかキモい。
変なアイテムを回収しちまったな。とりあえずこのキモいナイフの正体を確認するために、情報をチェックしてみるか。
再び指を摘む動作をして、ステータス画面を開く。
魔剣オソロ
レベル:1
攻撃力:100
スキルスロット1:なし
契約者:ギーゼラ
ギーゼラ? 誰だそれ?
今まで何度かアイテムや装備の情報をこうやってチェックしたことがあるけれど、「契約者」なんて項目は見たことがない。
というか──。
「ま、魔剣?」
魔剣って、アレだよな。ゲームとか映画で出てくる、何かしらの魔法がかかった、メチャクチャ強力な武器。
そう言われると、何だか魔剣っぽい形をしている。
妙な高揚感に、思わず鳥肌が立ってしまった。
これはもしかすると、もしかするのかもしれない。
え? 何? ここにきて、とんでもないものを回収しちゃった感じですか?