ひまわり畑に出ていた出店で昼ご飯をシェアし、アオの後ろに跨る。木漏れ日を走る中風に吹かれていれば、先ほどのアオと同じ気持ちになれた。
「掴めるかも、三パーセント」
え、と横顔で反応したアオを見て、私は真上に右手を伸ばす。大きく広げるのはたなごころ。
「あははっ。なにやってんの寧々っ」
「風を捕まえてるのー」
「風?」
「アオはそのまま漕いでてね、風が感じられなくなっちゃうから」
次から次へと手にあたる空気を、何度も握って閉じ込めた。グーで掴んでパーで離して、またグーで掴む。たったの三パーセントだって挑めば手に入るんだって、これはアオが教えてくれたこと。
「私、こんな発想なかったよ」
靡くアオの襟足を見つめながらそう言うと、彼の「んー?」が返ってくる。
「息も空気もそこにあるって、触ってみようだなんて、思ったことなかった」
そしてそれを掴むことが、こんなにも楽しいことだなんて。
下ろした右手をアオの腰につけると、おもむろにペダルを止めた彼。くるり、振り返った彼の顔には汗が散りばめられていて、それが太陽の下で宝石のように煌めいていた。
ぷるるとその宝石を飛ばして、アオが自身の指先に口付けた。その指を翳して彼が感じているのは、先ほど私が思う存分感じたもの。
「寧々。この風はどこから来てるか知ってる?」
ふと投げかけられた壮大な問い。うーんと首を傾げる。
「空?」
「空以外で」
「え、空以外?」
またもやうーんと首を傾げる。今にも頭を落としてしまいそうな私に、アオは言う。
「アメリカ」
その答えにはズコッと自転車から落下しそうになった。
「ア、アメリカぁ?そんなわけないじゃんっ」
「本当だよ。だってここは太平洋に一番近い日本じゃん。海の向こうから吹いてきてる風は、全部アメリカから来てるんだよ」
至極当然だろと言わんばかりのアオの態度に解せぬ表情を浮かべていると、スタンド代わりだった彼の足がペダルに乗った。
「じゃあ、たしかめに行こっか」
風のように次から次へと。アオといれば、わくわくが止まらない。
「掴めるかも、三パーセント」
え、と横顔で反応したアオを見て、私は真上に右手を伸ばす。大きく広げるのはたなごころ。
「あははっ。なにやってんの寧々っ」
「風を捕まえてるのー」
「風?」
「アオはそのまま漕いでてね、風が感じられなくなっちゃうから」
次から次へと手にあたる空気を、何度も握って閉じ込めた。グーで掴んでパーで離して、またグーで掴む。たったの三パーセントだって挑めば手に入るんだって、これはアオが教えてくれたこと。
「私、こんな発想なかったよ」
靡くアオの襟足を見つめながらそう言うと、彼の「んー?」が返ってくる。
「息も空気もそこにあるって、触ってみようだなんて、思ったことなかった」
そしてそれを掴むことが、こんなにも楽しいことだなんて。
下ろした右手をアオの腰につけると、おもむろにペダルを止めた彼。くるり、振り返った彼の顔には汗が散りばめられていて、それが太陽の下で宝石のように煌めいていた。
ぷるるとその宝石を飛ばして、アオが自身の指先に口付けた。その指を翳して彼が感じているのは、先ほど私が思う存分感じたもの。
「寧々。この風はどこから来てるか知ってる?」
ふと投げかけられた壮大な問い。うーんと首を傾げる。
「空?」
「空以外で」
「え、空以外?」
またもやうーんと首を傾げる。今にも頭を落としてしまいそうな私に、アオは言う。
「アメリカ」
その答えにはズコッと自転車から落下しそうになった。
「ア、アメリカぁ?そんなわけないじゃんっ」
「本当だよ。だってここは太平洋に一番近い日本じゃん。海の向こうから吹いてきてる風は、全部アメリカから来てるんだよ」
至極当然だろと言わんばかりのアオの態度に解せぬ表情を浮かべていると、スタンド代わりだった彼の足がペダルに乗った。
「じゃあ、たしかめに行こっか」
風のように次から次へと。アオといれば、わくわくが止まらない。