愛してる。
 蝉のオスたちが一斉に愛を叫び出す季節が今年も巡ってきた。アオと離れ離れになってから三回目の夏。いつも彼を想っている私だけれど、この季節は余計に思い出してしまう。何故ならアオは、私の夏そのものだったから。

 虫カゴを携え駆ける少年。
 かき氷と書かれたのれん。
 誰かがまいた打ち水の跡。
 揺れる空気。
 好んで行くのは日陰の道。
 避けたくなるのは太陽の下。

 自転車を漕ぐアオの後ろ姿。
 ひまわり畑。
 蚊に刺された二の腕を掻くアオ。
 海を焼く打ち上げ花火。
 アオとやった山崩し。
 人気(ひとけ)のない校舎。
 黒板に描いたアオとの相合い傘。
 夜のプールサイド。
 アオの温もり。
 空と水に浮かぶ満月。
 アオとのキス。

 また新たな夏の彼を、発見したい。