「どうしたの?頭が痛いの?」

 四年ほど前、中学の入学式の時。廊下で(うずくま)るひとりの男の子がいた。

「保健室行こう」

 そう言うと彼は遠慮がちに首を横に振った。

「他人なのに、悪いよ」
「なんでよ、同級生でしょ?もう他人じゃないじゃん」
「え」
「もう友達だよっ」

 制服の胸元についた同じ花を見てそう言ったけれど、それ以来彼を見かけることはなかった。