ちょっと意地悪な態度とは裏腹に、(とろ)けるような愛撫(あいぶ)も、こちらを見つめる熱を孕んだ眼差しも、肌を滑る手も、そのすべてが優しい。愛されていることを全身で感じられ、陽茉莉は容易に蕩けてしまう。

「礼也さん……好き……」

 相澤の口が、弧を描く。

 レースカーテン越しに、丸い月が浮かんでいるのが見える。
 狼神様の寵愛(ちょうあい)と独占欲は、想像以上に深いようです。

    ◇ ◇ ◇

 新山(にいやま)陽茉莉が狼神様である相澤礼也から愛されるようになったきっかけは、半年ほど前に(さかのぼ)る。

 陽茉莉の母方の本家は代々神主をしており、陽茉莉はいわゆる神力(しんりき)が強い。幼い頃から人ならざる邪悪なもの──邪鬼が見えるという特殊体質だった。