陽茉莉はうつむいたままぶんぶんと首を横に振る。その反応にほっとした。

 陽茉莉が自分を愛していることは百も承知している。狼神になれたのだから、それがどんなに強い愛情かも知っている。

 だからこそ不安だった。

 ──自分の感情を押し殺して、俺のために俺から去るなどと言い出すのではないかと。

 けれど、陽茉莉が自分といることを選んでくれるのなら、自分がやるべきことはひとつしかない。

「ああ、俺も陽茉莉と結婚したい。だから、結婚しよう。陽茉莉のことは俺が守る」

 陽茉莉の心の不安を拭い去ろうと、優しく背中を撫でる。
 顔を上げた陽茉莉は、こちらを見つめて泣きそうな顔をした。

「私ね、礼也さんのこと、すごく大切なんだよ。大好きなの。絶対に幸せにしたいんだ。私、もっと頑張るからこれからも支えてくれる?」