陽茉莉の様子から、なにを聞いたのかは大体察しがついた。きっと、母親である琴子がどうして邪鬼に呑まれたのか、そして父親である雅也がなにを心配しているかについてだろう。

「──陽茉莉のことは絶対に俺が守る」
「でも……。数年もの間、私や赤ちゃんからいっさい目を離さないなんて無理でしょ? 私が半人前なせいで、礼也さんに迷惑をかけちゃう」

 タイミングを合わせたかのように、テレビから大きな歓声が聞こえた。実況者が英語で興奮気味に捲し立てている。タッチダウンが入ったようだ。

「迷惑だなんていっさい思っていない。陽茉莉を守るのは俺の役目だ。これから先、一生」
「…………」

 陽茉莉の顔に、迷いのような表情が浮かぶ。

 その様子に、焦燥感を覚えた。もしかして、陽茉莉が自分から離れてしまうのではないかと思ったのだ。

「それとも、陽茉莉は俺と結婚するのをやめたい?」
「ううん、やめたくない」