「もう、仕方ないなあ」

 作戦だとはわかっていても結局折れてしまう。

「陽茉莉。愛しているよ」
「私も……好きですよ」

(映画は……、また今度かな)

 経験上、今夜この後、ふたりで映画を見る未来がまったく見えない。

「俺といるのに、他のこと考えているなんて、()けるね」
「え?」

 妬けるもなにも、あなたといつ映画を見られるかと──。

 そんな陽茉莉の言い訳は、容易(たやす)く封じられてしまう。性急に唇が重ねられ、それはすぐに深いものへと変わった。何度も何度もキスをされる。