息子である相澤のことを大切に思っているというのはまだ理解できるが、礼也と陽茉莉を大切に思って、というのはどういうことだろう。

「陽茉莉様のように神力が強い人間は元来邪鬼に襲われやすいです。体を乗っ取ってもすぐに壊れずに耐えられるから」
「ええ、そうね」

 陽茉莉は頷く。その話は、ずっと以前に相澤から聞いた。

 邪鬼はこの世に未練を残したまま成仏できずに悪霊鬼化した死者の魂だ。彼らはこの世での未練を晴らすために、体が欲しい。けれど、普通の人間は乗っ取られると短時間で死んでしまう。だから彼らは、体を乗っ取られてもある程度耐えられる神力の強い人間を見つけると体を奪おうとするのだ。

「邪鬼が最も狙いやすく、また邪鬼の魂が体になじみやすいのはどんな人間だかわかりますか?」
「邪鬼が最も狙いやすく、体になじみやすい? うーん、神力がものすごく強い人?」

 陽茉莉はうーんと悩みながら答える。けれどその答えは間違っていたようだ。香代は首を横に振った。