陽茉莉は自分の手元の札を見る。一見すると同じような文字が綴(つづ)られているようだが、よく観察すると確かにそれぞれの札から感じられる神力には差があった。

「陽茉莉様はとても頑張っていらっしゃいますよ」

 香代は陽茉莉を元気づけるようにそう言うと、すっくと立ち上がる。

「お茶を用意してまいりますね」

 にこりと微笑むと、部屋から出ていった。


 シーンと静まりかえった和室に、陽茉莉はひとりぽつんと残される。
「はあ。私、だめだめだなぁ」

 欄間(らんま)に彫られた(きじ)の彫刻を眺めながら、独りごちる。

 頑張っているつもりだったけれど、自分の集中具合すら把握できていないなんて──。