ふっと相澤の口元に笑みが浮かぶ。
 まるでその答えを予想していたかのような態度に、恥ずかしさから顔が上気するのを感じた。

(今日の礼也さん、本当に意地悪っ!)

 狼神様である相澤は満月の夜になると性格までオオカミになる。いつもより強引で、意地悪なのだ。
 けれど悔しいことに、ちっともそれが嫌じゃないから困ってしまう。

 赤くなった顔を見られるのがおもしろくなくてそっぽを向く。

「陽茉莉、こっち向いて」

 ちらりと視線を向けると、熱を(はら)んだ眼差しと視線が絡み合う。

「映画は後で見よう。今は陽茉莉を感じたい。いいだろ?」

 同意を求めるような視線を向けられ、陽茉莉はなにも言えなくなる。本当は決定事項になっているくせに、こういう場面で陽茉莉の同意を求めるなんてあざとすぎる。