「礼なら祓ってから言ったらどうだ?」
「では、祓ったらもう一度お伝えします」

 かなり辛辣(しんらつ)な言い方だったが、ときにはクレーマーにも遭遇(そうぐう)する営業部で鍛えられたメンタルのおかげで平静を保っていられた。

「親父!」

 陽茉莉と礼也のやり取りを聞いていた相澤が声を荒らげる。

「陽茉莉ひとりで中級なんて無茶だ。祓除師は自分を守るためのあやかしとペアを組んで活動する。親父だって知っているだろう!」

 けれど、陽茉莉は相澤に片手を向けてそれを制止した。

「礼也さん、大丈夫。私、頑張るよ。礼也さんのことが大事だから、礼也さんが大切に思っている人たちに認めてもらいたい」
「陽茉莉……」

 相澤が眉根を寄せて陽茉莉を見つめる。陽茉莉はもう一度大丈夫と伝えるように、小さく頷いた。

(とはいえ、どうしよう……)