テーブルを挟んで向かい側に雅也が座る。

 それとタイミングを合わせたように、「失礼します」と声がして入口の襖が再び開く。顔を出したのは、先ほど玄関前を掃き掃除していた女の子──香代だった。お茶ののったお盆を持っており、陽茉莉たちの前に一客ずつ置いてゆく。

「で、今日はなんの用だ?」
「こちらが俺の相手。新山陽茉莉さんだ」

 相澤が陽茉莉のことを紹介したので陽茉莉は慌てて頭を下げると、「はじめまして。新山陽茉莉です」と挨拶をする。

 その声が聞こえていたはずなのに、雅也はちらりともこちらを見ず、返事もしてくれなかった。

(あれ? これってもしかして……)

 その態度に、急激な不安が胸の内を占める。

「以前から伝えていた通り、結婚しようと思う」

 相澤が告げると、雅也は小さく首を振った。

「それは認めない。前から言っているだろう」

 ドキンッと胸が大きく鼓動する。