実際の年齢は知らないが、見た目はせいぜい四十歳前後だ。かなりの長身で、おそらく相澤と同じくらい──百八十センチ前後だろうか。黒と灰色の袴を着ており、そのお尻には銀色の美しい毛並みの尻尾が見えた。

(わあ! 狼神様の姿になったときの礼也さんにそっくり)

 陽茉莉は思わずそこに現れた人物──相澤の父親である雅也をじっと見つめる。一方の雅也は一瞬だけ陽茉莉のほうを見たがすぐに目を逸らし、相澤に視線を移した。

「礼也、一週間ぶりだな」
「ああ、久しぶり」

 相澤が頷く。

(ん? 一週間ぶり?)

 一週間前に会ったのだろうか? 全然聞いていないけれど、ふたりの会話から判断するにそうなのだろう。

(そういえば、悠翔君も『ときどきお父さんが帰ってくる』と言っていたっけ?)

 けれど、陽茉莉はすでに数ヶ月間相澤や悠翔と暮らしているが、一度も雅也と鉢合わせしたことがない。