「あの子もオオカミのあやかしなんですね」
「うん、そうだね。ここの屋敷にいるのはみんなオオカミのあやかしかな」
「へえ」

 今の言い方だと、あの子以外にも何人ものあやかしがここに住んでいるのだろう。なんだか不思議な感じがする。

「雅也様っていうのが、礼也さんのお父さんなんですか?」
「そう。狼神だから、一応ここの主なんだ。狼神にはなかなかなれないから」
「ふーん」

 昔、あやかしが神に昇華するにはいくつかの条件があると、教えてもらった。邪鬼をやっつける力が強いことはもちろんだけれど、それ以外にも大事なことがあるらしい。そのひとつが〝生涯でひとりと決めた相手と、命をかけるほどの強い思いを通じ合わせる〟ことだと教えてもらった。

(生涯でひとりと決めた相手と命をかけるほど強い思い、か……)

 狼神様になるほど強くなるのはきっととても難しいし、生涯でひとりと決めた相手と(めぐ)り会い、思いを通じ合わせるのはもっと難しいことだろう。