(なんてまあ、自信家!)

 こちらを見つめる相澤の瞳は、陽茉莉の答えを見透かしているように見える。

「そんなことは……、ありますけどね」

 ちょっと悔しくて素っ気なく答えると、相澤の口の端が上がる。
 こちらに一歩近づくと、ふわりと抱きしめられた。

「陽茉莉、可愛い」
「そのわりに、約束をすっぽかされて放置されましたけど」

 今日は一緒に映画を見ようねって前から約束していたのに。

 優しく抱きしめられると、約束をすっぽかされたこともすっかり許してしまう。けれど、やられっぱなしが悔しくてわざと()ねたような態度を見せる。

 まあ、今日の件に関しては邪鬼(じゃき)退治の緊急呼び出しだったので彼には責任がない。仕方ないってわかっているのだけれど。

「拗ねているのか? 本当に可愛い」

 なぜか先ほどよりも嬉しそうに目を細める相澤の背後に、左右に揺れるオオカミの尻尾が見えた。これはとても機嫌がいい証拠だ。